願い事の本棚

□5月2日 sideサンジ
1ページ/9ページ

サンジは夕焼けの中、適当に買い物を済ませて自宅に向かっていた。
24時間スーパーに立ち寄ると公園の中を通るのが近道だ。
のんびりと帰りながら、公園にある時計に目を向ける。
時刻は午後4時56分。
せっかくのゴールデンウィークだし、少し遠くへ旅行にでも行こうかと思っているサンジは何時に出掛けようか悩んでいた。

(あ〜、変な時間に出ると道が混んでるだろうなァ。いっそのこと明け方に出かけるか)

割りと突発的な感情で旅行しようと思っただけに、泊まる場所も決めていない。
誰か友人を誘おうかとも思ったが、一人旅も悪くないかと思い直した。

(泊まる場所っつっても、今のタイミングで空いてねェかな)

どこも混んでいそうな気がしたが、電話で訊いてみるくらいは別にいいだろう。
公園を抜け、マンションの階段を上り、三階にある自宅へ向かう。
鍵を開け、扉を開く。人の気配はない。
一人暮らしなので、気を遣う相手もいない。
一緒に住んでいた彼女も最近、別れてしまった。
多少の寂しさもあるが、自由な今がものすごく楽だ。束縛のキツイ女だったからかもしれないが。
人のモノほど良く見えるというのは本当かもしれない。少なくとも自分はそうだ。
誰かの彼女を好きになることが多い。そして、自分の元に来ると興味が極端に薄れてしまう。
手に入れるまでの過程を楽しんでいると思われても仕方ない気もした。
我ながら嫌な性格だと思いつつ、サンジは夕食を作り始めた。



***



旅行に行くための雑事を済ませていると時刻は午後10時30分を回っていた。
食事のあと、うたた寝をしていたのも原因の一つだろう。

「ここにするか」

インターネットで検索したホテルの中でも24時間電話予約をしているホテルを発見した。
携帯で電話しようとして固まる。

「あれェ……」

画面は真っ暗だった。充電が切れたのだろう。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ