願い事の本棚
□5月3日 sideサンジ
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サンジは目を覚ますと、ソファーに寝ていた。
寝ぼけたかと思ったが、自身のベッドを見て、昨日の出来事を思い出す。
かなり異質な状況だと思った。
旅行に出るはずだったのに、気がつけば今に至る。
なぜルフィの滞在を許したのか、謎だ。だって、赤の他人なのに。
一度、寝ているルフィを確認しに行く。
すやすやと寝ている姿はまだ当分起きそうもなかった。
なんとなく、頭を撫でる。
身じろぐ事もなく、眠り続けていた。余程、疲れているのかもしれない。
起こすのもはばかられ、とりあえず着替えてから、洗濯でもするかとサンジは立ち上がった。
***
「ん……」
雑事も終わり、のんびりしているとルフィが小さく呻いた。
壁掛け時計に目を向けると、昼前。
そろそろ起こさないとさすがに、やばいかと寝返りを打つルフィに声を掛ける。
「起きたか?」
予想を超える俊敏さで、ルフィは跳ね起きた。驚かすつもりはなかったが、寝起きは無防備なものだ。聞き覚えのない声に驚いたのかもしれない。
「サンジ!」
「お、おお? おはようって、もう昼だけどな」
やけに勢いのいいルフィに驚きながらもサンジは笑って挨拶した。
どうやら状況は理解しているらしい。
あわあわと慌ててルフィはサンジを見てから、しょんぼりとした。
「おはよう! 買い物…ごめん、寝すぎた」
どうやら、寝過ごしたことを申し訳なく思っているらしい。気にすることないのに。
「いや、疲れてたみたいだからな。休日だし、のんびり寝ればいいんじゃないか? まだ寝るか?」
「ううん、大丈夫。起きる!」
身体が痛むのかルフィは多少、ぎこちなくベッドから下りた。そして、きょとんと首を傾げた。
「ん? おれ、ベッドで寝てたっけ…あれ?」
「あ〜、テーブルを枕に爆睡してたから、ベッドに運んだ」
「えっ…ご、ごめん。おれはソファーでよかったんだけど」
再び申し訳なさそうにしているルフィの右頬を軽く抓る。
気にしているのは目に見えているので、気を遣う関係は止めようという意味を込めて抓った。
「別にソファーで寝るくらいどうってことないっつーの。気を遣いすぎると疲れるぞ?」
「は、はーい」
抓られた頬を擦りつつ、ルフィは嬉しそうに笑う。
安心した。ルフィに気を遣われると何だかむず痒かった。ワガママを言って、甘えてくれた方がいい。理由まではわからないけど。
「着替え、どうする? 一応乾燥機にかけてるけど、まだお前の服は乾いてないんだよな。おれの服でもいいか?」
洗濯はしたが乾燥させるのを忘れていたので、まだ乾いていない。
すぐに出かけるのなら、自分の服を貸した方がいいだろう。
「うん! ありがたいです」
ルフィは笑って、礼を言って来た。
申し訳なさそうにされるより、この方がいいなと思いつつサンジはタンスへと向かった。