願い事の本棚

□5月2日 sideルフィ
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「ルフィ、目を開けろ」
「うっ…ここは?」

ゆっくりと目を開ける。まだどこか浮遊感が抜けなかった。
路地裏だろうか、近くに大通りがあるのか人の気配はする。

「5月2日、午後2時41分56秒。サンジのいる町だ。残念だが、居場所までは特定できなかった…自力で探すしかない。おれは少し、別件があるからそばにいてやれない。空間移動した証拠を消してくる。一人で大丈夫か?」
「ん、大丈夫。エースに甘えるばっかりはよくないから、自分で捜す」
「わかった。できるだけ早く戻る」

そう言い残し、エースは消えた。
途端に心細くなる。叱咤するように自分の頬をバシバシと叩いた。

「しっかりしろ!」

気合いを入れて、ルフィは少ない情報を頼りに大通りに向かう。
サンジの通っている大学に行ってみよう。
ゴールデンウィーク中だが何かしら手掛かりはあるかもしれない。
時間は限られている。
失敗も許されない。
とにかく、サンジを見つけないことには引き止めることさえできない。
サンジと話した中にある情報を思い出しながら、ルフィは走り出した。



***



「はァ」

大学は開いていたが、サンジの学部までは知らなかったので進展はなかった。
大学内にはいない。そして、それ以上の情報がないなら次に向かわなければ。
落胆しつつ、町中をうろつく。
もしかしたら、どこかで出会えるかもしれない。
辺りを見渡す。
自分のいる場所もよくわからない。
こんなことで見つけられるんだろうか。
不安に、なる。

「………」

頭を横に振り、冷静さを取り戻した。

(不安になるにはまだ、早い)

街灯のそばにある時計は午後5時を回ったところだ。
もしかして、旅行の準備をしているだろうか。
買い物に出かけているかもしれない。
ルフィは近くのスーパーに入る。
可能性は低くても、ゼロじゃないなら調べなければ気がすまない。



***



人気のないところも含めて、町全体を探した。
でも、見つからない。
この町にはいないのだろうか。
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