願い事の本棚

□5月4日 sideルフィ
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早く起きるのは苦手だったりもするルフィは根性でソファーから起きた。
時計に目を向けると午前8時。サンジがそろそろ起きても申し分ない時間。正直、寝過ぎた。
多少焦りながら、そーっとサンジを見に行くと、まだ眠っている。
身支度を整えて、とりあえず洗い終わっている洗濯物をカゴに入れて、ベランダに持って行く。
昨日の、というか居候させてもらっているお礼に何かしたかった。
今日は快晴で、風もそよそよと吹いている。これなら問題なく乾くだろう。
二人分の洗濯物はそこまでないので、すぐに干し終えた。

「わっ!?」

振り返るとサンジがいつの間にか背後にいて、かなり驚いてしまう。

「はは、おはよう」
「お、おはよう…もう、ビックリさせんなよ〜」
「いやいや、そんなことまでしてもらって嬉しいなァと思ったんだよ」

ルフィの持っている洗濯カゴを指差して、サンジは嬉しそうに笑っていた。
なんだか、照れてしまう。照れ隠しに、必要以上に怒ったような態度でベランダから部屋に戻る。
窓は網戸にしておく、換気に丁度いいし、風が心地良い。

「背後に立つ理由にはならないって!」
「悪かったって。朝食はおれが作ってやるよ」
「えっ?」
「それもしてくれる予定だったのか?」

意外そうな表情にルフィは再び気恥ずかしくなった。

「うん。いろいろとお世話になってるから」
「気にしなくていいのに。おれ、料理は作るの好きだからさ。でも、お前の作る料理も食ってみたいから今度作ってくれよ」
「…じゃあ、今日の晩ご飯作る」

今度、だなんて曖昧な表現ではいけない。サンジと一緒にいられる時間はそれほど残されていない。
自分の料理を食べてみたいと言ってくれているなら、食べて欲しい。
めちゃくちゃ上手というわけではないけれど。一生懸命に作るつもりだ。

「じゃあ、材料買いに行かないとな。楽しみにしてる」
「うん!」

頭を撫でられて、ルフィは嬉しそうに笑った。

(やっぱり、サンジが好きだなァ。絶対に、守りたい)

好きな人が自分の誕生日に永遠にいなくなってしまうなんて、そんなのは悲しすぎる。
叶わないはずの願いが、叶うかもしれない。いや、絶対に叶えるのだけど。
ここまで強く思った願い事はないような気がする。
サンジのためというよりは、完全に自分のためだ。
サンジのいない世界を生きることを怖れた、一般人には過ぎた願い。
それでも、偶然だが叶うことになった。まだ、叶えている途中だから油断はできないけれど。
自分は強運だと思う。普通では叶うことのない願いのはずなのだから。

洗濯カゴを置きに行ったあと、朝食の準備をしているサンジの後姿を見て、ふとサンジの願い事が気になった。

「サンジって、叶えたい願い事ある?」
「…願い事? 唐突だな。どうしたんだ急に」
「え!? あ〜、七夕…近いから…」

別に近くもなんともない。事実、二ヶ月先だから気が早いにもほどがある。
呆れつつもサンジは応えた。

「近くはないだろ…短冊に書く願い事って話か?」
「うんうん」
「この歳でそんな話をされるとは思わなかった…願い事ねェ…」

意外と真剣に考え出したサンジのますます願い事が気になってしまう。
自分に出来ることなら叶えてあげたい。エースが自分の願いを叶えてくれたように。
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