リボーン本棚

□感情
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コンビニにでも行こうかと一人歩いていると、前から歩いてきた男性に綱吉は話しかけられた。

「ちょっといい? 道に迷ってるんだ」
「はい、どこに行きたいんですか?」

誰かに道を聞こうにも人通りの少ない道なので、困っていたのだろう。
綱吉が快く了承すると、男は笑顔で話し始める。

「並盛中学校。どこにあるのかな?」

少しだけ、背筋がゾクリとした気がした。
風邪でも引いたのかと思いつつ、綱吉は懐かしい単語に頬が自然と緩む。

「並盛中学校はこっちじゃなくて…もう一本向こうの通りを行くとありますよ」
「そっか〜道を間違えてたのか。君さ、並盛中学校に通ってたの?」
「え?」
「懐かしそうな顔してたから」

にこにこと笑顔の男に綱吉も笑いながら、頷いた。

「あ、はい。そうなんです。だから、懐かしくて」
「そうだったんだ。よかったら案内してくれない?」
「はい、いいですよ。こっちです」

また迷っても大変かと思い、綱吉は男の提案に笑顔で頷く。
歩き出して、綱吉はすぐに立ち止まった。

「どうかしたんですか?」

振り返ると男は笑顔で立ち尽くしている。
ついて来ないのを不思議に思い、綱吉は男の元へと戻る。
男は少しだけ悩むような仕草をしてから、綱吉を真っ直ぐに見つめた。

「この世界では君と友達になってみようかなって思ってたんだけどさ」
「は、はぁ」

思ってもみない男の言葉に、綱吉は気の抜けるような返事をしてしまう。

「でも、僕って綱吉クンのこと大嫌いじゃない?」
「っ!?」

名前を知られていたことにも、明らかなる嫌悪を向けられたことにも目の前で笑顔のまま男の存在に不自然なほどの恐怖を覚えた。

「超直感って案外役に立ってないんだね。危険人物に話しかけられて立ち止まるんだもん。まだまだ成長段階ってことかな?」
「なに…言ってるんですか?」
「んー、違うんだよ」

綱吉の怯えた目を見て男は左右に首を振る。

「怖がって欲しいわけじゃないんだ。強いて言うなら君に怨まれたい」
「え?」
「だって、僕だけが君を嫌ってるなんてずるいだろ?」
「…嫌いならオレのこと、かまわなければいいじゃないですか」

かすれそうになる声音で何とか音を紡いだ。
誰かにこれほどの強い負の感情を向けられたことはなかった。
怖くても震えているだけでは、この場から逃げられない。
なんとか隙を突きたくて、綱吉は謎の男を見つめた。

「だから、それだと不公平でしょ? 僕だけが君を想って君は僕を知らないなんて、それこそ虫唾が走るって話だよ」

にこにこと愛想良く笑っているように見える相手に不思議と隙は見当たらない。
それに、綱吉は気がついてしまった、男の目は少しも笑っていないことに。
そのことに綱吉は瞠目する。その様子に男は笑った。
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