novel
□妬くかしら
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「ふふ。照れてますますかわいい。」
伯爵はリディアの手をとって、耳元でささやく。
この人もずいぶん女なれしているようだ。
どっかの誰かさんを思い出して少しムカツク。
突然、突風が吹いた。
海が荒れているせいだろう。
するとニセ伯爵は、リディアを風からかばうようにしたかと思うとそのまま抱き締めた。
どうゆうことよ!
…でもチャンスかも。
リディアも伯爵に腕をまわし、上着のなかなどに手掛りがないか探し始める。
「本当に可愛らしい人だな。」
そのとき誰かの足音と共に、人影が現れた。
ニセ伯爵の肩越しに見えるのはエドガーだった。
ニセ伯爵も気付いたらしい。
「おや?子爵。邪魔しに来たんですか?」
少し離れていてもエドガーがかなり不機嫌なのは、ひしひしと伝わってきた。
「…テリーサ。モーニングルームを訪ねるって伝えなかったけ?」
リディアは伯爵から離れながら気まずさを感じていた。
「ごめんなさい。子爵。伯爵とは昨日から約束してたの。」
するとエドガーが怪訝そうに眉を潜めた。
唇がそっと動く。
――リディアじゃないのか。と。
彼は昼間はリディアになっていると信じていたのだ。