novel
□浮気疑惑
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マナーン島での新婚生活を一時中断し、リディアたちは懐かしいロンドンに戻ってきた。
ザ・シーズンが始まるからだ。
毎日のように舞踊会やパーティなどが催されロンドンは騒がしい。
人間付き合いの苦手なリディアはお茶会の中でそっとため息をついた。
伯爵夫人となり、初めての社交界。
元々貴族ではないので戸惑うことばかりだ。
現に今。
「ねぇ、リディアさん。あのアシェンバード公爵が夫だと不安にならない?」
「あんなにハンサムで素敵なんだもの。わたくしだったら浮気してないかと毎日気が気でないわ。」
クスクスと意地悪そうに笑う貴婦人の本音は、リディアみたいなそんなに美人でもない貴族でもないものが、アシェンバード公爵夫人になったことが気に入らないのだろう。
あなたみたいな人はどうせ浮気されるわ。
幸せなのはいまのうちと本当は言いたかったに違いない。
これだから人の集まるところはきらいだ。
場に馴染めずにいるリディアをみかねたのかやさしげな貴婦人が歩み寄ってきた。
以前から交流のあるメースフィールド侯爵夫人だった。
「リディアさん。伯爵がいらっしゃってるわ。心配して迎えに来たのね。ふふ、こんなに愛されて羨ましいわ。」