novel
□最強の刺客
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「リジム。勝負しよう。」
昼下がり、翠蘭は木剣をいきなりリジムにおしつけた。
「私はいろんな人と勝負したが、まだお前とは勝負していない。それにみんな口々にお前が一番強いと言うんだ。一回くらい手合わせしよう。」
夫にこんなことを言う王妃なんて翠蘭以外にいるだろうか。
リジムは悩んだ末、しぶしぶ引き受けた。
翠蘭がリジムにお願いをすることなんて滅多にないのだ。
稽古場に行くと思いがけず人が集まっていた。
息子のラセルやサンボータまでいる。
「ねぇ、サンボータ。お母さまとお父さま、どっちがつよいの?」
「それはラセルさま、リジムさまではないでしょうか。」
「さぁリジムやろう!」
翠蘭はやる気満々だ。
その凛々しい立ち姿は敵までも魅了してしまうのではと思った。
それと同時に今まで翠蘭の相手をしていた者達に少し嫉妬心を覚えた。
翠蘭の真剣な眼差しは息を飲むほど美しかった。
「前言撤回します。ラセルさま。リジムさまは翠蘭さまの術にはまっていますから、翠蘭さまが勝つと思います。」サンボータはリジムに聞こえないようにしゃべる。
「どんな術?」
「リジムさましか効かない術です。」