novel
□妬くかしら
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ニセ伯爵と出かけてやったら、エドガーは妬くかしら。などと一瞬でも考えてしまったことにリディアはうろたえた。
べつに妬いてもらったってうれしくない。そう、うれしくない。
その一方で昨日、いつもリディアにするようにテリーサも簡単に口説くエドガーを少し困らせたいとも思う。
そうよ。ニセ伯爵がプリンスの手先なら、探ることもできるかもしれない。
「ええ。お母さん。伯爵と散歩をしたいわ。」
一緒に出かける希望は簡単に叶った。
「船遊びができなくて残念でしたけど、こうしてあなたから誘いをうけるなんて嬉しいですよ。」
そういってにっこり笑うニセ伯爵は、リディアの知ってる本物より軽薄そうに見えた。
完璧だと思っているような笑顔を向けられる。
「えぇ、私も嬉しいです。」
これからどうやって探ろう。
油断させなければ。
リディアは必死だった。
「昨日は美しかったけど、朝のあなたは大変可愛らしいですね。」
エドガー以外の人にそんなこと初めて言われたような気がする。
と言っても社交辞令ということはリディアにもちゃんとわかっていた。
「口がお上手ですのね。」
すまして言ってみたけれど、言われなれないのでリディアはしどろもどろ答えた。