novel*長編*
□恋の輪舞
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家の前で雪かきをしていた少年は、リディアの言葉に驚いてスコップを放り投げた。
「トレイシーが!?」
「どこか心当たりはない?」
うつむいて少し考え、はっと顔をあげる。
「あいつが落ち込んだときに行く、沢がある。よく小さいころ遊んだんだ。」
「じゃあ村長さんに話しましょう。」
しかし彼はあわてて首をふった。
「そこは秘密の場所だからだめだよ。昔、誰にも言わないって約束したんだ。」
「…ねぇ。小さいとき仲が良かったのに、なんでトレイシーに意地悪するの?」
リディアが問うと、テオは少し顔を赤らめた。
「…最近はよく、からかわれたりするんだ。トレイシーといると。」
「もしかして、照れ隠し?」
テオはイラだったように、はね放題の髪の毛をかきまわした。
「素直に気持ちを伝えなきゃと思っているんだけどさ………話しかけようとしたら、どうしてもひねくれちゃうんだ。」
そういえば前に、男の子は好きな女の子の前では素直になれないって、エドガーが言っていたような気がする。
「今は、素直にしゃべっているのにね。」
「そうだ。リディアがいたらトレイシーの前でも素直になれる気がする。一緒に行こうよ!」
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