novel*長編*

□恋の輪舞
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あんなふうに彼女が泣くのは初めて見た。


リディアの寝顔を眺めながら、エドガーは彼女が言った言葉を心の中で繰り返していた。

気持ちをわかってくれない。

幸せになんてできっこない。


エドガーはため息をつき、彼女の涙の跡をそっとぬぐった。


知らずしらず、彼女を傷つけてきたのだろうか?

きっとエドガーはもう、リディアを手放せない。
でも、そのかわりに、なにがあっても守ると決意した。
彼女が望むものは、すべて自分が叶えてあげたい。
幸せにしたい。

でもリディアは、エドガーといたら幸せになれないという。

エドガーの、自分が幸せにしたいと思う気持ちは、リディアにとっては幸せにはなりえないということだろうか。
たとえ、そうでも。
「…守るしかない」



エドガーはリディアから離れ、窓辺に近寄った。リディアをさがしている、魔物だか幽霊だかが、さまよっているのではと思ったからだ。

かすかに木の向こうに、黒い影が横切ったきがした。

「伯爵、あいつだ!」

ガラスごしに現れたニコがあわてて叫ぶ。

あれがリディアを連れていこうとしている魔物。元凶か。

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