じゅんがーる!

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尸魂界は今日も太陽が眩しくて、反逆者・藍染惣右介という敵さえいなければ至って平和な日々。毎日稽古や書類処理で疲れるけど、好きでやってることだから苦なんてことは全くない訳で。
なんて、言ってみるけれど実際嫌になることもある。わたしだって人間だもん。でも仲間にも恵まれると『苦』なんて言葉本当に遠ざかるんだ。




「おはようございまーす」

あの事件のあと新しく配属された十番隊では三席の座にいる。
日番谷隊長に松本副隊長、正反対の二人(失礼かな)の下で働くのは楽しく感じるこの頃。

昨日も松本副隊長が蕎麦饅頭持ってきてくれて、凄く美味しかったんだ。今度どこの甘味処か教えてもらおっと。とか言ったら日番谷隊長は怒るかな。でもこの若さで隊長やってるなんてどれだけ努力したんだろう。わたしには想像出来ないもの。天才なんて言われてるけど、そんな人いないと思うの。ただ人より何倍も何十倍も鍛練したんじゃないかなあって。



「なンだよ」
「へ…」
「こっちばっか見て、言いたいことあンなら言え」


どうやら日番谷隊長のこと勝手に解析してたら視線もそっちに向いていたようで。眉間に皺を寄せた隊長がハンコ片手にわたしの方を向いていた。声に出ていなかったのが唯一の救い。


「あ、えっと。お茶飲みますか?」
「…あぁ、頼む」


イマイチ納得していないのか少し間の空いた返事。そりゃあお茶飲むか聞くのに凝視したりしないよね。配属されたばかりなのに不真面目な女だと思われたかしら。
なんて考えながらお茶を注ぐ。
(あ、茶柱…)
今日も(と言ったら失礼だけど)松本副隊長はお留守。日番谷隊長も隊首室ではなく執務室にいるから実質二人きり。まだ十番隊に来て日が浅い所為か沈黙が気まずかったり。



「どうぞ」
「悪いな」

けどそんなこと気にしてたらキリないもの。わたしは自分に任された仕事をやるだけよ!

首をぶんぶん横に振ってよし、と意気込む。すると何かに躓きバランスを崩す体(うっそ!)。手には自分の分の熱いお茶の入った湯飲みが乗ったお盆。がしゃん!と音を起て、湯飲みは割れた。
(あっつ…!)
顔は回避したものの、見事手や腕には熱い液体もといお茶がかかった。え、え、わたし今凄い鈍臭くない?こけるとか何に躓いたの!それより熱っ…!!

「バカやろう!何してんだ!」

早く冷やせ!と怒気混じりの声で腕を引く日番谷隊長は給湯室の蛇口を開いた。勢いよく腕にかかる水が冷たくて気持ちいい。じんじんと痺れるような感覚の手と、すぐ横には日番谷隊長の顔。呆然とする中、確実に鼓動は速まっていた。

熱さに体が興奮しているのか、ドジな一面を見られ恥ずかしいのか、日番谷隊長の横顔が思いの外凛々しくて綺麗だったからか、理由は分からないけれど。








熱いのはここも
(同じだと気付いたのは、大丈夫か?と顔を覗き込まれてから)



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(080712)
新連載、よろしくお願いします^^


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