じゅんがーる!

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何してんだろ、わたし。
こけてお茶零すわ、書類ばら撒くわ。まだ十番隊に来たばかりなのに、へましてばっかり。折角隊員の人たちとも馴染めてきたと思ったのに、これじゃ幻滅されちゃう。

おまけに、なんであんな奴が三席なんだ、とか言う人が出てきちゃったり…いやいや考えすぎよ。
落ち込んでても意味ないもん。これからはもっと書類整理や虚退治頑張って、名誉挽回よ!


なんて息込んでみたものの今日は書類が少なくて午前には片付いてしまった。そして虚退治の任務もないときた。さて、どうしようかしら。日番谷隊長は不在だし(最近松本副隊長の姿を見ていない気が)、隊舎でも散策してこようかな。うん、そうしよう。




「三席!お疲れさまです」
「お疲れさま〜!」


十番隊は和やかというか真面目で誠実な人が多いと思う。みんな仲良さ気だし、いい雰囲気。
隣の隊の十一番隊は書類渡しに来ただけで、じろじろ見てきてちょっと苦手。
逆隣の九番隊は…なんだろ、あの頃の東仙隊長は優しくて部下思いで、修兵さんは話してみると結構気さくで。元いた隊だから愛着は凄くあるんだ。勿論十番隊もこれから離れたくない、ってくらい長く深く関わっていきたいんだけど。

顔の筋肉が緩みながらうろうろして辿り着いたのは鍛練場。カンカン、と木刀の音が響いている。体がうずうずする、今日は稽古の日じゃないけど、覗くぐらいいいよね?



(わあー、結構いるな〜)

開け放たれた扉から中を見回せば熱気と共に汗の匂い。稽古に励む人や、隅で休んでいる人。
その中でも一際小さな影が目に入る。どきっと反応する自分にぶんぶん首を振った。だってどきって何、どきって。いつの時代の人間よ!(フツーの人間より長生きしてるけどさ)いや、そーじゃなくて。

日番谷隊長は『隊長』で、きっと火傷したときのアレで変に意識してるだけなんだよ。そーよ、気にしなきゃいいんだから!


「…何してんだ?」
「っぎゃあぁ!?」
「ぎゃぁって、おまえ」


深呼吸してるときにいきなり声掛けられたからってなんて声…!(恥ずかしい!)しかも日番谷隊長本人!あーあーあー、日番谷隊長すっごい眉間に皺寄せちゃって。仕事もしないで何してんだ、とか思ってるのかな。ついさっき、汗拭く姿や稽古している真剣な顔にどき、なんて思っていたのが嘘みたい。


「えと、書類片付いたので隊舎の散策を少々…」
「そうか、相変わらず仕事が早いな」
「(わ、褒められた?)」
「お前もやるか?」
「はい?」

なんのことかとぽかーんとしているとほら、と木刀を差し出された。あぁ、と納得しつつもとんでもない、と瞬時に思った。だって日番谷隊長の相手なんてそんな!そう口に出すと日番谷隊長は少し微笑んだ(あ、かっこいい)。


「しっかり木刀持ってんじゃねーか」
「あ、…えへ?」

隊長の言う通り掌にはしっかり木刀が握られている。意思とは反してどうやら身体はやる気満々らしい。まあ実際わたしは体動かすことも好きだから。でも日番谷隊長と、ってなると流石にわたしだって緊張するんだもの。でも、

「手加減無しですよ」
「知らねーぞ、どうなっても」










うるさい心音は
(稽古の音で聞こえませんように)
(だって、普段笑わない人の笑顔は本当に眩しいんだもの)




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(080821)
わたしも冬獅郎の笑顔見たい^^

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