じゅんがーる!

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初めてだった。誰かを想うのは。何がどこが好きなのか、など聞かれても困るが。なにせ気付いたらすでに嫉妬していたのだから。
それでこの気持ちに気付くとは俺も相当鈍いのか。その前に部下を想ってもいいものなのか?仕事が手に付かなくなったりしたら、シャレにならない。
俺に限ってそんなこと有り得ない、と言えたらいいのだが、何分部下を好きになるなど経験がないから断言出来ない。

だったらこの感情を胸の奥に閉じ込めるべきじゃないのか。



疑問ばかりが頭を巡る。これだけで目の前で執務をこなすこいつを時折見てしまうのに、どうこうなるなんて。
いや、それは都合が良すぎるか。


この前だってそうだ。髪についた葉っぱを取っただけなのにやけに顔が赤かった。まあアイツ男に慣れてなさそうだし、あー…檜佐木といつもあんなことしてるんなら免疫あるか。じゃぁ何故?
付き合ってんのか、とか聞く権利ねえし何より仕事以外のこと(しかも恋愛事)を聞くには抵抗がある。だが気になることは気になるワケで。松本ならすんなり聞くんだろうが、って気にし過ぎだろ俺。


そうだ、檜佐木と言えばあの時アイツが泣いてた理由じゃねえか。俺の感情なんか二の次でいいのに、やっぱり駄目だ調子を狂わす。想う、なんて。




「十番隊には慣れたか?」
「え?あ、はい。隊員の人たちもよく飲みに誘ってくれるし、一体感って言うんですかね、えっと…あれ?」
「(…何が言いたい)」
「つまり、」
「いい隊だーって言いたいのよねー?」


このやろ、どこから現れやがった。突然隣に現れた松本に驚きつつも、肯定の言葉を言うアイツはちゃんと笑っていた。
これがもし偽りだとしたら、と考えると胸が痛む。だが俺が疑ってたら駄目だよな。色恋沙汰とか関係無しで支えなきゃなんねーと思うし、アイツも必要だと思う。

って結局は他の男を近づけさせたくねえだけじゃねーのか?駄目だ分かんねえ。




「ならいいんだが、何かあったら相談しろよ」
「はい、有難うございます」


安心したように笑顔を見せるコイツの助けに少なからずなれるのかと思うと嬉しくなった。

それから書類を届けてくると言って執務室を後にした。今日は前みたいに違和感もなく、霊圧を探るような真似はしなくてよさそうだ。



そしてこの場に残るのは松本。当然のように書類整理などしないが、ここにいるだけでも珍しい。まぁ俺は仕事しろ、と一喝するワケなんだが、聞かないのは日常茶飯事で溜息をついて自分の書類を手にとった。


「ねー隊長ォ」
「あンだよ」
「好きなんですかー?あの子のこと」
「…は?」


饅頭片手にこっちも見ないで問い掛けてきた松本に思わず間抜けな声が出た。コイツの言う好きは、恐らく(絶対に)恋愛感情のことで、それは当たっている。だが認めるなんてこと出来る筈もない。松本に知られたら直ぐに噂になるか面白がられることは目に見えているのだから。


「何言ってんだテメエ」
「アレです、女の勘」
「ほー、そーかい」
「大丈夫ですよぉ、心配しなくても」
「何の話だ」
「だって多分あの子…」

間を置く松本の言う意味がイマイチ理解出来ない。自分にはお見通しだとでも言うような口調に気付けば筆を持つ手は止まっていた。

「まぁこの話は内密にしときますんで頑張って下さいね」
「おいっ仕事しろ…!」


俺の制止も聞かず、松本は執務室から出ていった。中途半端な台詞だけを残して。










口数多い副隊長
(頑張れって…どーしろっつーんだよ)




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(090112)
乱菊ねーさん万歳\(^O^)/


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