じゅんがーる!
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突然ですがわたくし、とーってもかなり虚退治に行きたいです。
稽古はしているから体が鈍るなんてことはないんだけど、実践に活かしたいの。だって十番隊来て3週間経つのに、一度も虚退治の任務ないんだよ!まさに欲求不満よ!
…っと少々興奮し過ぎました、失礼。ささやかな不満を胸に今日も書類整理に励んでおります(ん?これ四番隊のじゃん)。日番谷隊長も黙々と執務を熟していて、時折こっちを見てくることもなくなった。そしてわたしの失敗も最近減ってきたんじゃないかと思う。やっといつもの調子が出てきたとでも言っておこうかしら(あは)。
日番谷隊長と乱菊さんとも打ち解けられたって言うか仲良くって言うか、上手く言えないけどいい感じになってきたと思うんだ。
失敗しても二人とも怒るどころか励ましてくれて優しくて、ああいう二人になりたいな、わたし。
そう考えていると自然に口端は上がっていた。そんな時に名前を呼ばれる。
やだ、また見られた?
「昼の虚退治行くか?」
「い、行きます!」
「じゃぁ時間になったら隊員の沖野と向かってくれ」
「はい、分かりました」
平常心で体の向きを戻す。だけどそんなの大して持たない。
漸くきたよ、待ち望んでいた任務が!二人で、って言うのはちょっと意外だったけど、文句は言わない。何事も思ってみるもんだね。あーもう凄い浮足立ってるかも。別に虚退治行けるからってどうこうなるワケじゃないのに。落ち着け、わた…し……。
「嬉しそうだな」
っ!ほらもうっ!直ぐ顔に出るんだからあ!そして日番谷隊長はなんだか不思議なものでも見るような目で見てくるんですけど。ああ、穴があったら入りたい…。
「えと、十番隊来てから初めてなので嬉しくて」
「あぁ、新入りにはうちに慣れてから行ってもらってるからな」
「(慣れ…わたしって遅い?)」
「よく分かんねえって顔してるな」
だって…慣れってどうやって判断するの?隊員との接し方?書類整理の早さ?
きっと日番谷隊長の言う通り、わたしは疑問でいっぱいという表情を顔全体で表している。それに答えるためか日番谷隊長の視線はわたしに向けられた。碧翠色の瞳に吸い込まれるように眼が離せない。
そんなわたしに放たれた言葉は衝撃的で。
「お前…泣いてたから」
この前、見ちまったんだ。
そう続けた日番谷隊長は言いながらゆっくりと視線を下ろした。わたしは必死に記憶を探る。
「檜佐木といただろ、二人で」
修兵さんと…あの時だ。ここから逃げてしまった日、日番谷隊長への気持ちの可能性に気付いた日。
見られていた。泣いていたのだけじゃない、きっと抱きしめられていたのも見られた。だから執務室に戻ったとき何も言わなかったんだ。
話の内容は?どこまで聞かれた?あの話を聞かれていたとしたらわたしの日番谷隊長への想いを彼は知っている?
考え出すと止まらない性分に疑問は増えるばかりで、返事をするのを忘れていた。
「えっと…」
「お前は、」
「!」
なんでそんなこと聞くの。
そんなのただ胸が痛い。
理由はやっぱり分からないけれど。
経験、ないもの
(檜佐木と付き合ってるのか)
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(090224)
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