おおふり

□結果、辿り着く場所2
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ダムダムとバスケットボールの音が響く体育館。室内で運動するあたし達バスケ部にとって、4月の気候は暑すぎず寒すぎず動きやすい。今日はこの体育館を共同で使っているバレー部が遠征でいないから、全面バスケ部が占領してるんだ。半面を男女で使うのは正直本気で練習にならないからこういう日はかなり嬉しかったりする。


「よし、10分休憩ー!」
「はあーい」

キャプテンの一声でみんなボールを籠に投げ入れて休憩に入った(因みにあたしは副キャプテン)。
いつもみたいに顔洗いに体育館横の水呑場に行くとグラウンドから野球部の声が聞こえた。桜の咲く中で練習するなんて気持ちいいんだろうな、と思うと口元が緩む。


「ちょっと…あんた何笑ってんの」
「っな、なんでもない!」
「ふーん…、先行ってるよ」

うんって返事をしたら歩きながら掌ぱたぱた振って体育館に戻っていった。危ない危ない、ぱー子寸前!(寸前と言い切ってみる)
にしても今日の野球部は元気だなあ。声よく出てるんだよね(木があって姿は見えないんだ)。今年は甲子園いける最後のチャンスだし頑張ってほしいなあ。去年はベスト8だったっけ。応援楽しかったの覚えてる。

…西浦も、頑張ってたな。テレビから見たこーすけは背も伸びて、いい顔でプレーしてた。今もいいチームメートとキラキラした汗流してるのかな。って二年も経って、こっちから振っておいて別れた彼氏のこと思い出すなんて未練がましいな、あたし。
さっさと顔洗って戻ろう。



「(気持ちー)」

あー、すっきりした。
んー…なんか、話し声する?(多分男子)バスケ部以外でここ使う人あんまりいないのに。


「あったあった!水呑場!」
「おい待てって!田島っ」
「花井も泉も早く来いよー」
「ったく、おめーの体力の限界はどこよ」


聞いたことのある、ううん。忘れもしない声。おまけに名前。
この場から立ち去れって危険信号発信してるのに、体が動かない。いやいや、ばったりなんてそんなまさか…!


「あ、先客!バスケ部?ちわーっ」
「おらっ田島!っと、ちわ」
「こ、こんにちは」


元気な小柄な男の子と長身の男の子の後ろに見えるのは、二年振りに顔を合わすこーすけ。うわぁ、こーすけ固まってるよ。無理ないよね、あんな別れ方した元カノがいきなり目の前に現れたら。



「ひさしぶ、り」
「、おー」
「なになに!泉知り合い!?」
「中学ん頃の、友達」

ともだち。
うん、充分。顔見知りとかクラスメートで済まされるのは寂しいけど、うん。それにやっと思い出した。クラスの野球部男子が練習試合あるって言ってたの。
西浦だったんだ。




「(…友達って空気じゃねーよなあ)田島!さっさと水呑んで戻っぞ!」
「えー!俺も話してえよー」
「いーからっ!泉、先行くからな」
「おー分かった(って二人にすんなよ花井!)」



どうやら三人は水呑みに来たらしい。確かグラウンドの蛇口って少ないもんね。えっとあの長身の方はこの異様な空気を察してくれたのかしら。
ともかくこの気まずいのどーにかしないと。って言ってもアレ以来話してないし、うまいこと今まで会わないで過ごしてきたからなあ。あぁ、どうしようか。


「部活?バスケ部だっけ」
「あ、うん(覚えてるんだ)」
「…あのさ、」
「なに?」
「この後時間ある?」










結果、辿り着く場所2
(心臓が、うるさい)




2008,04,03
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予期せぬ再会って焦るよね。

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