おおふり

□結果、辿り着く場所4
1ページ/1ページ


ガタンゴトン揺れる電車の中、頭を反復するのは帰り際に言われたあの言葉だけだった。
あたしが気にするのを分かっているくせに、どうしてあんなこと言うんだろう。ただでさえ駅にこーすけがいるかもしれないという只の可能性(待ってるって言ってたけど)に少なからず動揺しているのに。

あたしは今までこーすけとしか付き合ったことないけど、ヨリ戻すとか、それはありえないと思う。だってどこにあんな別れ方した元カノを二年も想ってくれる男がいると言うの。いくらこーすけがあの頃のように優しいままだとしても、そんな期待しちゃいけない。
あたしだって、こーすけをどう思っているかよく分からない。忘れなきゃ忘れなきゃって思っていたけど、野球とかあの公園通る度に思い出すのはこーすけ。それにさっき名前呼ばれて心臓が跳ねたのも事実。
嬉しかった。昔みたいに呼んでくれて。




「おっす」
「あ、部活お疲れ様」

やっぱりこうやって顔合わすだけでドキ言ってしまう。
ここじゃあれだからって歩き出すこーすけの後ろをとぼとぼ着いていく。後ろから見る背中は、幾分大きくなったと思う。

「(ってこの道ってまさか)」

あまりいい予感のしない道のり。あたしの勘は正しかった。

「相変わらず人いねえのな」
「そ、だね」

よりによってあの公園。仕返しでもされるのだろうか(どんなよ)。いやいやこーすけはそんな人じゃない…筈。
適当なベンチに座ると、左半身がピシピシ。あぁ何言われるんだろか。


「どーよ、部活は」
「ん、ぼちぼちかな」
「バスケ好きだもんな、おまえ」
「こーすけも好きだよね、野球」


あたし、普通に話せて、る?顔の筋肉引き攣りそうだよ。一回も顔すら合わせられないし。絶対変だよね。

「ぶっちゃけ高校入ってから告られたことある?」
「え、あーうん。断ったけど」
「俺も。お前のこと忘れられなかったから」

ほんとにぶっちゃけ何聞きだすのかと思ったけど、それよりその後!
(お前のこと忘れられなかったから)
え、あのあたしどうすればいいんですか。思いがけない台詞に心臓はうるさくなる一方で。こんなこと言われたら期待してしまう。でも、ダメ…っ。


「俺、お前のことまだ、」
「っお願いだから!そんなこと、言わないで」
「…なんで」
「…迷惑なの。二年も経ってそんなこと言われても」

そうだよ、甘える訳にはいかない。あの日勝手な理由で突き放したのはあたしだから。こうやって少しだけでも話せたことに感謝しなくちゃ。


「ごめんね、こーすけ」
「…何言ってんだよ」
「あたし帰らなくちゃ」
「おい!」
「ばいばい」

エナメル鞄肩に掛けて全力で走った。あの頃と同じ、言い逃げ。何が成長したなぁ、よ。何も変わらないじゃない。
こーすけも追い掛けてこない。もう、大丈夫。これで呆れられたし嫌われた。これでいいの、いいんだよ。


そう言い聞かせながら泣いて走った。そうじゃなきゃ、その場に崩れ落ちそうだから。











結果、辿り着く場所4
(あいつ!また嘘、付きやがった…!)




2008,04,12
------------
多分次ラスト。
余談⇒泉が追い掛けないのは試合で足怪我したから。という都合のいい設定。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ