おおふり

□結果、辿り着く場所5
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一週間、まともに寝れていない。理由なんて決まってる。

あの時も一週間前も、自分で突き放しておいていつまでも悩んでホントにバカだ、あたし。今日の部活もシュート入らないわ、パスミスするわ、散々。キャプテンにはあの後どーなったとか問い詰められるし(シカトしたけど)、溜息ばかりついてしまった。家に帰ってもそれは変わらなくて、携帯電話に消せずに残っている泉孝介のメモリを見つめるばかり。連絡をとる訳でもなくただただ見つめること十数分。
あたしは(面倒だから)アドレス変えてないけど、こーすけは変えたんだろうか。もしメール送ったら届くのかな。

「(…あ、メール)…え?」

画面に出たのは泉孝介という三文字。一瞬固まって恐る恐るボタンを押していく。

from:泉孝介
sub:無題
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いきなり悪りぃ。
5時半にあの公園で
待ってる。

   -END-


アドレス変えてなかったんだ…じゃなくて!5時半って…まだ1時間あるけど、…行けないよ。こーすけだって1時間もすればきっと帰る。そうだよ、行っちゃいけない。ごめんね、ごめん。







ご飯食べて、テレビ見て、かれこれ九時。外は真っ暗で、暖かくなったと言っても四月の夜はまだ冷える。三時間以上経つのに待っている筈がない。だけど、気になって仕方ないのが現状。気付けばコンビニ行ってくる!って嘘ついて家を飛び出していた。

あたしの家から公園まで徒歩十分。入口には一台の自転車。まさか…。



「…こーすけ……?」

ベンチには体育座りをして顔を埋める人影がひとつ。制服姿で横には鞄。

「…遅せえよ」
「な!だってこんな遅くまでいるなんて!来るかも分からないのにっ」

まさか三時間も待ってるなんて思わないじゃない!それにこーすけ…少し震えてる。
咄嗟に持ち出していたカーディガンを差し出したらさんきゅ、って言ってから肩に掛けた。


「分かってたから」
「なにが?」
「お前が絶対来るって」

なんの根拠もないのに、どうしてこんなこと言えるのだろう。あたしを信じてたの?
なんでとか、どうしてとか、そんな言葉しか頭を過ぎらなくて。気付けばこーすけの腕の中にいた。

「…や、だ。離して」
「離さない」
「こーすけ…っ」
「お前、離したら逃げるだろ」
「もう、逃げないから」

そう言ったらこーすけはやっと離してくれた。こーすけの温もりが名残惜しかったりするけどこれは言わないし言えない。
どうして絶対なんて自信があるのか聞くと、お前嘘ばっかついてんだろって言われた。あんまり答えになってないような気がするけど、こーすけの言うことは当たってる。

「嘘付くとき顔すら合わさねえし、いつも両手握ってんだぜ。二年前も先週も」
「うそ!そんなの、」
「何年の付き合いだと思ってんだよ」

お前のことなら何でも分かるよ、そう言ってあたしの髪をくしゃりと乱したこーすけの手は大きくて、男の人の手だった(当たり前だけど)。外見や体格が少し変わっても、あたしに対する接し方は何も変わっていない。
あーもう、ぽろぽろぽろぽろ涙が溢れて高三にもなって恥ずかしい!

「俺涙見たい訳じゃないんだけど」
「っごめんねえ!あたし、バカだからあ!」
「おー。よく俺もお前みたいバカ何年も好きでいんぜ」

中学のとき付き合い始めた時点で何年好きかなんて分かったもんじゃない。その頃には既にこーすけが隣にいるのが当たり前で、きっとこーすけも同じで。

「こーすけのばかあ!」
「いや、そーじゃねえだろ」










結果、辿り着く場所5
(こーすけがすき!)
(そーそー)




2008,04,19
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こーすけには全てお見通しなのでした。

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