おおふり

□変化球か直球か
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「今日ね、告られちゃった」
「いや、そんなこと報告しなくていいですから」


つまんねえ授業も終わって部活に向かおうとチャリ小屋に来たとき、事は起こった。手の平振られちゃ無視する訳にいかないし、田島たちには後から行くって告げてここに残った…ら、これだ。

この人は一つ上の先輩で、浜田の関係もあってか(元クラスメートらしい)よく応援に来てくれている。試合だけじゃなくて、俺たちの邪魔にならないように練習も見ているときがあって、別にそれはいいんだけどなんでか俺によく絡んでくるんだよな。

で、デートに誘われたとか元カレが、とか明らか俺に言ってどうするって事を言ってきたりして、少し振り回されてる感があるのは俺の気のせいじゃないハズ。確かに先輩は綺麗だし頭いい(らしい)し、マネージャーでもないのにいろいろ手伝ってくれて部員には優しいから、普段モテるのも見てれば分かるけど、俺と二人で話すときは若干態度違うと思う。
自惚れとかいい意味でなくて、なんつーんだろ。わたしに興味持って下さい、みたいな……いや、絶対ぇありえねえ。


「でも断っちゃった」
「へーそうなんすか。まぁ先輩モテますし」
「んーん、好きな人いるから断ったの」


ぱちっと視線が合うと、グラウンド行こうか、と歩き出す先輩。少し照れてしまうのは仕方ないと思う。
さすがに二人乗りにはまだ抵抗あるから先輩の隣でからからチャリを押していく。

好きな人ーとかさ、そんな風に言われて気にならないと思ってんの。俺はまず美人な先輩とそーゆー話すんのに違和感あるんだけど。だって俺たちんな仲良い訳でもなければ、勿論付き合ってなんていない。俺から先輩に話し掛けることはほとんどねえし、ただ先輩が俺に絡んでくるだけ。


「先輩はなんでいつも俺にそんな話するんすか」
「気になる?」

ふふっと笑うように聞いてくる先輩に、顔に若干熱をもつのと同時に少し苛立ちを覚えた。俺をからかっているようにしか思えないんだよな。他の男の姿ちらつかせて、俺に恋愛感情なんて持ってないくせに。

「先輩は俺にどうしてほしいんすか」
「…孝介くんにね、妬いてほしいの」
「は…?」


な…に、言ってんだこの人。
(…孝介くんにね、妬いてほしいの)
何度もこの言葉がエコーする。足はちゃんとグラウンドに向かっているけど、焦点は合わずに必死に頭を回転させる。妬いてほしいって…先輩好きなヤツいんじゃねーのかよ。まさか、好きなヤツが俺で、気をひきたいとかんな訳ないだろーな。つーか仮にそうだとしたら、さっきの苛立ちはヤキモチかもしれない訳で、俺は先輩の術中にハマってたってことか?


「今日、部活終わるの待っててもいい?」
「危ないから帰って下さい」
「(あらら、怒っちゃったかな?)」
「あー…やっぱ送ります」









変化球か直球か
(話、あるんで)
(なあに?話って)
(…先輩もあるんだろ、話)




080524
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彼の前だと強がってしまうんです、先輩は。

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