おおふり

□心音リズム
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『オンナ』って恐ろしいと思う。中学の頃はお互いガキみたいに笑ったり、くだらないことではしゃいだりしていたのに、高校じゃまるで他人のようになる。それに随分素振りも外見も大人びて、いや実際に可愛いと言うより綺麗と言う一面を垣間見るのだ。
だけど家に帰れば変わらない俺たちの関係に戻っているのだけど。

こんこん、と窓を叩く音にまたかよ、と溜息をつくのと一緒に口端は上がる。風呂上がりの体を持ち上げ窓を開ければ、お隣さん(という名の幼なじみ)の登場。いつもすまんね、と入って来る口調は大人を通り越してオヤジだと思う。学校じゃそんなこと言わねえあたり、切り替えは完璧なのだ。こういう意味でも『オンナ』は恐ろしい。それでも、俺だけ知っていると思うと嬉しくもあったり複雑。


「お前さあ、窓から来んなって何回言えば分かんだよ、危ねえだろ」
「だってこんな時間に玄関から、なんておばさんに迷惑じゃない」
「俺には迷惑だと思わない訳?」
「?こーすけ、迷惑だーって顔してないじゃん」


はは、なるほど。んなこと言われたら反論出来ねえじゃねーか。言葉に詰まっているのを誤魔化すようにタオルで頭をガシガシと拭いた。すると感じる視線。首を回せばすぐ傍で見上げられていた(ンだよ)。

「なに」
「背、伸びた?」
「…多少は」
「ふーん」

ふーんてなんだよ、ふーんって。身長くらい俺だってまだ伸びるっつの。
何が言いてーんだよ、と聞けば野球雑誌見せて、なんてとんちんかんな返事。会話が成り立たねえ…!とりあえず雑誌渡すと、ベットに寄り掛かりパラパラとページをめくり出した。

こいつも風呂上がりなのか少し髪は濡れていて、タンクトップやらショーパンでそれはもう薄着そのもの。窓を開けた瞬間、谷間(屈んでいるから)(確か大してない筈)に目がいってしまったのはここだけの話。いくら暑いからってフツーこんな恰好で男の部屋来るか?誘ってるようにしか見えねーんだけど。紅潮した頬とか少し焼けた太股・腕、潤んだくちび…いやいやいや、何考えてんだ俺!あーくそ、調子狂う。


「変わっちゃったら嫌だなって」
「…は?」
「さっき聞いてきたこと」


なんだ…こいつも似たようなこと考えてんだ。部活とかで忙しくて顔会わす時間も減って(別に付き合ってる訳じゃない)、お互い知らないところが少しずつ増えて。きっと今にこうやって部屋来ることもなくなるんじゃないかって、俺たちの関係が壊れるんじゃないかって、恐いんだと思う。ずっとこのままで、なんていられる訳ないもんな。

でもまあ、それも俺やこいつによるんだろーけど。


「俺は変わりたいんだけど」
「幼なじみを見捨てる気ですか」
「ったく、もっとポジティブに考えられねーの?」

首を傾げるこいつに言葉より行動で示したのは、単に声に出すのが照れ臭かったから。回された腕に赤くなったであろう頬を見られたくないから。それだけ。







心音リズム
(こーゆう変化もあんだよバーカ)



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(080906)
ドキ言ってるのは二人とも同じ。

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