おおふり

□青<赤
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ジリジリと太陽の日差しが照り付ける7月。夏休みに入って数日経つ今日な訳だけど、こんなに暑いと外に出る気になんててんでならない。冷房の効いた部屋で涼んでいるのが1番だもの。だから折角の長期休暇もひっきーで終わってしまうのかも。
うーん、と背伸びをしていると玄関の方からお邪魔しまーす!と聞き覚えのある元気な声。あれだよ、どれだけバテててもあんなに元気な人が近くにいると吹っ飛ぶよね。ホントにしんどいとうるさいだけだけど…(ごめん)。

バタンと勢いよくドアを開けた悠一郎は、部活帰りなのかエナメル鞄を担いでいた。ドア壊れるでしょ、なんて言ってみても聞く耳持たず。鞄をそこら辺に投げ捨てて(あたしの部屋…)、目の前にキラキラした瞳で座り出した。

「海!海行こっ!」
「やだよ、こんな暑いのに」
「暑いから行くんじゃんかー!」

だよねぇ。悠一郎の言うことはよーく分かる。毎日炎天下で野球してるとたまには海ではしゃぎたくなるよね。でもね女の子にとって海ってちょっとした凶器よ?なにせこの怠けた体を晒さなきゃいけないんだから。それを分かってるのかしら、この方。

「悠一郎、泉くん達と行ってきなよ。あたし家にいるし」
「えー!一緒に来ればいーじゃんっ」
「いーや。水着なんて着れない」

…なにさその目。じろじろ見てくるとか。どーせ、タプタプな体してますよーだ。
悠一郎の視線から逃げるように立ち上がる。瞬間手首掴まれて、元の位置というか悠一郎の足の間に引き戻された。
(何事…ってぎゃぁ!)
気付けばお腹に腕を回され軽く揉まれている!な、な、な!

「何すんのー!ばかあ!」
「うわっ!危ねっ」

しゅっ、とパンチ食らわそうと拳を向けるも、いとも簡単に腕を取られてしまった(悔しいーっ)。もーっ何なのよ一体!乙女のお腹揉むとか何考えてんの!信じらんないっ。

「お前ちゃんと飯食ってんのかー?細すぎだぜ!」
「細くないし!食べてるし!つーか離せっ」


ぎゃーぎゃー暴れると分かったって、と返事してやっとこさ離してくれた。今日は半径3mは近寄らせちゃいけない気がする。
第一、部屋の中で抱き着いてくるのに水着なんて着たらどーなるのよ!だめ、考えただけで鳥肌たつ!あたしだってさ、悠一郎の水着にどきーなんてした時期あったけど、最近じゃ暑いって言って直ぐ脱ぐからもう慣れちゃったのよ(さすがに上で止めるけど)。あぁ、あたしこのままでいいのかしら。

「どーしても行かねーの?」
「行かない」
「じゃぁ俺も行かない」
「なんで、行けばいーじゃん」
「ばっか!お前いねえのに行ったってつまんねーよ!」

だから行かね!と言い放ち、悠一郎は投げ捨てたエナメル鞄を持ったと思ったら、何か言いたげに振り向いた後、バタバタと階段を下りていった。お邪魔しましたーと声が聞こえたあたり、帰ったのは分かったけど本当嵐のような男の子だ。言いたいこと言って帰るとか…や、あたしも断って申し訳ないけど、ねえ。

なんてぐるぐる考えていると、外から帰った筈の奴の声が。おまけにそれは大声であたしを呼んでいた。窓を開けて見下ろせば当然悠一郎はいて。


「水着姿見てもいーのは俺だけなんだから!だからっ勝手に海行くなよっ!」

それは満面の笑み付きだった。あたしの顔は青かったり赤かったり。







青<赤
(…今度誘われたら行ってあげようかな)



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(080914)
もう夏終わりじゃないか!

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