おおふり

□俺たちの恋愛表現
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最近、練習後の蝉の泣き声に無性に腹が立つ俺は相当疲れてるのだろうか。

まあ実際夏休みの今、毎日朝から晩までくたくたになるまで練習しているから、疲れていない、なんてこと口が裂けても言えねーんだけど。でもそのおかげで今年の予選はいいトコロまでいけたし、来年は期待出来るんじゃねーかと内心思っている。俺の他にも同じこと考えてるヤツいるだろーし。まぁ西浦のデータ取られてるだろうから、そうスンナリいかねえだろうけど、モモカンのアレはもの凄く頭痛えし何事も前向きに考えねーと、な。あいつらと野球すんのは楽しいからどーにかなりそうなんだよ、なんて甘い考えなんだろうけど。

(つーか、)

…あいつ、何してっかな。今日は練習試合してダウン、ミーティングだけだったからいつもよか空は明るくて。折角の夏休みも部活三昧だから遊びに行く暇なんてねえし。メールは数通、電話も数分、悪いとは思うけど体は睡魔に負ける。

あいつは応援してくれるし、俺もそれは嬉しいけど、たまの電話じゃ会いたい、って呟いている。あいつも運動部だから時間合わなかったから本当顔合わさねえし(グラウンド来ると離れたくなくなるから嫌なんだと)、同じ学校同じ町内のくせしてちょっとした遠距離恋愛みたいになっている。それも夏休みの間だけかもしれねーけど、一ヶ月は長い。


ぐるぐる考えている間に家に着いてシャワーを浴びる。べたつく汗と一緒に泥も洗い流した。
(このもやもやも流れて、替わりに目の前にいてくれればいいのに、なんて)
肩にバスタオルを掛けてハーフパンツだけ履いて部屋に戻った。ばふっと顔を枕に埋めてベットに横になる。
あーやべ、ねむ。せめてメールを…と机の上にある携帯に腕を伸ばす。すると開く部屋のドア。

「おい!開けるときはノックしろ、って…」
「ごめ…ん」

いつも勝手に入ってくる家族に注意したつもりだった。でも、今ドアを開けたのはあいつで。なんでいんだ、とか俺上裸なんだけど、とか混乱していると先にあっちが口を開いた。


「家の側で浜ちゃんに会って、もう皆帰ったって聞いたから、」

来ちゃった、そう言い終えるや否や俺の元に駆けて抱き着いてきた。
え、ちょ…待て。落ち着け俺。浜田は家近所だから今の話は分かる。そしてこいつの息が荒いのは(胸元にあたってこちょがしい)きっとダッシュで来たからであって…。なに寝かけてたんだよ、俺!



「あー…こーすけの匂いだ」
「おー、ちょ…とりあえず離せ」
「…やだ。離さない」

やだってお前、こんな体勢耐えろと?てゆか俺的には顔見たいんだけど。普段くっついたり甘えたりしてこないから引っぺがすのは胸が痛む、からしない(なにより嬉しい)。


「寂しかった」
「おう」
「会いたかった」
「俺も」
「…キス、したい」

蚊が泣くような声で呟かれたそれに顔は見えないけれどきっと真っ赤なんだろうと思った。だって少なからず俺は驚いた。
首に回していた腕を解き、頬に添えて顔を上げさせるとやっぱり赤くて。それが可愛くて触れるだけのキスを何度も角度を変えて柔らかい唇に落とした。


何の邪魔も入らない部屋にいるのは久しぶりで、鼻の頭がぶつかる程の距離で視線を絡ます。



「…そろそろ離れねーと襲うぞ」
「は…」
「せめて服着させてくんね?」


そこまで言えば気付いたようで漸く体を離した。俺としては名残惜しいけど、本当に襲う訳にはいかねーかんな。
だけど胸を押した手首を掴んでもう一度キスをした。あーくそ可愛い。


「素直にいいなよ」
「何を」








俺たちの恋愛表現
(「好きだ」って)
(…お互い様だろ)




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(081026)
忙しさのあまり思いついた。
好きと言えない二人。

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