短編2

□星屑ロマンス2
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「ちょっとだけ我慢して」
「おま、っ…」

時刻は11時、場所は真っ暗闇の森の中。スタート地点から出発して約20分。あたし達は大きな木に吊られています。
理由?そんなの簡単。数分前、脅かしにも大してびびらないあたし達は最後のペアということもあって、のんびーり歩いていた。そんで何か紐みたいなのが足に引っ掛かったと思ったら、コレ。漫画で見るような網の縄にぶらんぶらん揺られている。
暴れても叫んでも誰も来る様子はないし、携帯は勿論圏外。懐中電灯は持ち上げられたと同時に落としたときた。で、なんとか解けないかと試みている、のだけど!


「くっそー!ふっざけんなよアイツらあ!」
「…落ち着け、あと退け」
「解けぬあーいっ!!」
「聞けおら」

こんなの絶対誰か仕掛けたに決まってる!まじ許さん!とかキレながら縄を弄っていると胸元から聞こえる日番谷の声。あ、何で胸元からかって言うと、あたしが日番谷を跨いで作業しているから下敷きのようになっているのであって(だって身動き取れない)。一応胸は当たらないようにしてるんだけど、今頭叩かれて少し体を起こした。

「お前な、怒んのもいいけど落ち着け(つーかこの態勢に少しは意識しろ)」
「だってムカつかないの日番谷は!」
「ムカつくけど怒ったって何も変わんねーだろ」


わーお、大人だね日番谷は。こんなときも冷静とかちょっと尊敬。だけど反面少しくらい焦ってほしいんですけど。道から外れた訳じゃないからいずれ誰か通るだろうけど、いつまでこのままか分かんないじゃん。
見下ろせば無惨に転がる懐中電灯。何の声かも分からない複数の鳴き声。暗闇のせいか余計に気持ち悪い!あーもうやだっ。


「聞いてんのか?」
「え?」
「切るもん持ってねえかって」

てゆーか今更なんだけど、あたし達凄く密着してるんだよね。息がかかる程の距離に漸く気付いて今になってドキ言い出した。ごそごそポケットを漁る間も日番谷の髪が当たってこちょがしい。って何意識してんの。日番谷は部活の仲間!そんな――。


「っいやあぁ!!」
「うわっ危な!?」
「やだやだやだやだやだっ」
「は?なに、おい!」
「むし!肩!取って!」
「肩?…あぁ、ほら」

取れたぜ、と落ち着いた日番谷の声。その声にやっとあたしも冷静を取り戻してきた。
あ、取り乱して失礼。あたし周りには(何故か)結構強い女の子として通っているらしいんだけど、虫だけは無理なのです。なんか肩に違和感あると思ったら名前にも出したくないブツがいて。木に近いせいだろうけど、もう最悪っ。


「もういねえから、泣くな」
「っごめ…も、やだ…―」

言われて涙ぐんでいることに気がついた。それと同時にもう一つ。

「俺がいんだから、」








星屑ロマンス2
(何も心配する必要ねえよ)
(あたし、抱きしめられてる?)




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(081109)

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