短編2

□星屑ロマンス3
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ドクンドクン…うるさい鼓動がどうか聞こえませんようにと、願った。でも日番谷のが聞こえて、ドキ言っているのはあたしだけじゃないんだ、と逆に照れくさく感じる。
飛び付いたのはあたしで、寧ろ既に密着状態だったけど、抱きしめられるとは思わなくて、はっきり言ってどうすればいいか分からない。だってこんな経験ないし。誰か説明して下さい。

「ひ、つがや…?」
「っ悪い…」

腕の力を緩められても、吊されたままじゃ大して距離はとれない。目なんて合わせられないし、ただ気まずい空気が流れるばかり。困った、何か話題を……あ!

「ね!はさみ、あったよ!」
「っ、あぁ」
「切るよ?」
「おー…あ、俺やる」

動くぞ、と一言言って日番谷は体を起こした。あたしのポケットに入っていたはさみ(いつ入れたっけ)を受けとって少しずつ縄を削っていく。
20分程経って漸く人一人抜け出せる穴が空いた。あぁ長かった、この20分が特に。だってさっき抱きしめられてドキ言ってたばっかなのに、首元から腕回されて作業されるとか。耳元に息掛かるし、さっき体離した意味ないし!もうイジメですか。

先出るぞ、と日番谷は無理矢理動いて縄から体を出し、吊されている木の枝に攀じ登る。それに続いてあたしも日番谷の手を借りてなんとか枝に座った。二人乗ってもびくともしない、少し安心した。枝のチョイスだけはあってたみたいね、この罠仕掛けたヤツ。

「お前降りられるか?」
「あー…この高さはちょっと」
「じゃぁ俺先降りるから飛び降りろよ」
「は?」
「受け止めてやるって」
「いやいやいや!日番谷のこと潰すよ」
「ばーか、そんなやわじゃねえよ」

それにさっき引き上げた感じ軽かったしな。そう続けた日番谷は一人先に木を伝うことなく、地面へと着地した。足腰鍛えてんだなぁ、って感心してる場合じゃなくて!別に日番谷が小柄だから、とか心配してるんじゃないんだけど、ホントあたし重いし軽いとかけなしてんの?みたいなね。いや、日番谷がそんなつもりないことは分かってるけどさ!飛び降りるって、飛び降りるって…!

「おい!」
「は!え?」
「早くしろ!」
「で、も…」
「少しぐらい信用しろバカ!」

やけに凛々しい顔した日番谷に(ただ怒っているだけかもしれないけど)胸は高鳴った。てゆかまたバカって。っくそう、飛び降りればいいんでしょ!
心を決めて唾を飲み込む。ぶっちゃけまた虫現れそうだからさっさと降りたいのが本心なんだよ。見下ろせばまだか、とでも言いたげな日番谷。そんな彼目掛けて飛び降りた。それは一瞬で、瞼を開けると日番谷がいた。身長が大して変わらないあたし達は座ってても目線が同じで、やけに顔が近く感じる。
頬に添えられた掌の部分がやけに熱かった。







星屑ロマンス3
(え…日番谷、顔赤い?)
(こいつ…顔熱くねえか?)




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(081124)
次ラストです。

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