短編2

□これからもずっと
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「冬獅郎、冬獅郎!」
「んだよ、うるせーな」

しんしんと静かに真っ白な雪が降り積もる12月、今日は大晦日。あと数分で今年は終わり、新年を迎えようとしている。その時を私は冬獅郎の部屋で過ごそうとしているのだけど、当の本人は眠ってしまって今起こしたところ。

カウントダウンしよ!って言ってるのに寝ちゃうのは流石っていうか、疲れているのかもしれない(バイト三昧で)。
でも付き合い出して初めてお泊まりの許可も貰えて、大晦日っていうのに寝なくてもよくない?私もそれなりにドキ言ってるんだけどカラブリですか?



「ねーあと1分だよ、寝てる場合じゃないんだかんね」
「あー…お前いりゃなんでもいいから寝かせてくれ」
「はー?」

半分寝ぼけてんでしょ?と声掛けたら寝ぼけてねーよ、と腰に巻き付いてきた。いや、その行動が既にあなたの寝ぼけ振りを表しているんですが。
はぁー疲れてんだなあ。無理ないか、冬休み入ってから毎日バイト入れてんだもん。まぁ部活引退して、早々に進学先の決まった私たちは時間に余裕のある時期だから稼ぎ時ではあると思うけど。これで最後に過ごすことになるかもしれない年越しなんだから(何せ春からお互い県外進出)、起きててくれてもって思うのよ。冬獅郎だってそれは分かってる筈だし。


そんでまた瞼閉じようとしていた冬獅郎には悪いけど頬を引っ張ってもう一度起こした(だってもう5秒前!)。


「ほら冬獅郎!3秒前!」
「はいはい、にー」
「イチッ!はっぴー―ッ!」

私の新年お祝いの言葉を遮って冬獅郎は今年初めてのキスをした。

聞こえるのはテレビからの新年を迎えた歓声だけ。目をパチクリさせる私の瞳に映ったのは悪戯に口端を上げる冬獅郎。え、なに、ドコから演技だこら。


「…ちょっと、寝ぼけてたんじゃなかったの」
「ばーか、寝ぼけてねーって答えただろ」

う…確かに。じゃああの普段しない猫みたい抱き着きはなんなのよ。私は寂しいときとかたまにするから、さっき冬獅郎が抱き着いてきて珍しい、とか思ってたのに。
そう考え込んでいるのに気がついたのか、隣で肩を抱いていた冬獅郎は私の髪に指を絡ませて口を開いた。


「最近似てきたってよく言われんだろ」
「ヘ?あぁ、私たち?」
「もしかして考えてることも同じとか思ってんのは俺だけか?」


ドクン、と胸が高鳴る自分がいた(何を今更)。それはつまり、冬獅郎は寂しいと思っていて、春からのことを少しは考えてくれてるってこと。なんて、都合のいいように解釈してみたり。


「決めた!」
「初詣の願い事か?」
「へ、あ、うん」


元から勘はいいけどこんな考え読まれちゃうと逆に恥ずかしい…なんか複雑。
冬獅郎は決まっているのかと聞けばあぁ、と短い返事が返ってきた。

「…、せーの!」











これからもずっと
(離れても今と変わらない、)
(気持ちでいられますように)




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(090101)
はっぴーにゅーいやー!
2009年もよろしくお願いします^^

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