捧げ物小説

□Think future,
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日本の温暖化を確実に思わせる暑い暑い夏休み。三年のわたし達は進路を真剣に考え出す時期で、週に一度面接練習をしに学校に出てきている。
大まかに進学組と就職組に分かれて、とりあえず基本的な質疑応答を繰り返す。大体の人は進学先・就職先に目星をつけているけれど、全く決まってない人は志望理由を応えるのに凄く苦労しているみたい。中には作り話を考える人も。

まぁそんなもんだよね。わたしもこの仕事に就きたいって気持ちはあるけど、そんな長々と理由なんて思いつかないもの。
でも言うことはちゃんとまとめてあるし、予想外の質問にも応えられてると思う。

だけど、どの先生にも指摘されることがひとつ。




「あー!もうやだ!」
「おい、うるせーぞ」
「…ちぇ、冬獅郎だし。まぁいいや、聞いてよ!」


先生たち皆さ!表情が固いって言ってくんの!

そう、わたしは作り笑顔で話す程余裕がないらしく、いつも無表情なのだ。ぶっちゃけそればっかり指摘されて少し半泣きだったりする。くそう、負けてたまるかって思っても中々進歩はしないようで。なんだか自分がっかりだ。
そんな傷心中のわたしの気持ちなんて考えないで、進学志望の冬獅郎は鼻で笑った。


「笑い事じゃないんスけど」
「悪い悪い、らしいなと思って」
「どーせアンタは面接も完璧なんでしょー」
「まぁ、お前みたいに表情では指摘されねえな」



え、ちょっと待って、なんですと?半分嫌味と半分冗談で聞いたつもりなのに、表情に関する指摘はないって?なんで!普段八割は考え読めない顔してる冬獅郎が!柔らかい笑みで喋ってるっていうの!?うわっ想像つかない!


「ね!信じらんないんだけど!どういう仕掛け?」
「仕掛けって俺は機械か」
「ねーなんで!」
「考えんだよ」
「何を?」
「楽しみなこと」


なんだそれ、何が言いたいんだと首を傾げていると冬獅郎は続けた。
就職してからの新生活や新しい友人との付き合い、高校生活では出来なかったこととか、これから楽しみにしている色んなことを頭に思い浮かべるのだと言う。

その仕事先で充実した生活…少し難しいけど冬獅郎の言う意味は分かった。



「冬獅郎は何考えてんの?」
「あ?言うかバカ」
「えー!ずるいっ」
「ずるくねえだろーが、方法教えたんだから」


それだけで感謝しろ、そう言い残して冬獅郎は教室から出ていった。

まぁ、そうなんだけど…いいじゃん教えてくれても。そんな変なこと考えてんの?でも冬獅郎も男だし?女の子に言えないことが一つや二つあってもおかしくないもんね。

なんて、窓から外眺めていると頭に小さな衝撃。
…なに、誰(びっくりした)。



「一発で内定貰ったら教えてやるよ」


振り向いたらついさっきこの場にいた冬獅郎がいて、言いたいことだけ告げてまた教室から出ていった。残ったのは後頭部の痛みと疑問。

あいつ…何したいの大丈夫?
だけどお陰で燃えてきた。冬獅郎の秘訣実践して、表情のダメ出しになんかに負けないで絶対受かってみせる!

そんで教えてもらうんだかんね!








Think future,
(大学通いながら迎えに行く準備すんだ)(俺にはやらなきゃならねえことが山ほどあるから)




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(090125)
二周年フリリク企画
百合様に捧げます!
リクエスト有難うございました。

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