★禁文章★

□雨の最中で
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あの栗毛の猫目が、今日も敵意の刃を向けている。

気分が良い。

それは俺と奴が敵対しているからだろう。

敵だ。敵には刃を向けて、斬り倒すのみ。
痛みで顔を歪ませる奴を見下す時、俺は支配感に酔い痴れる。
相手はまだ子供。女へとなる発展途上の中途半端な子供。
そんなナツミへ本気の勝負を挑む俺。

「バノッサぁぁぁ!!!」

声を荒げて、怒りしか映していないナツミ。
そうだ…俺だけにその怒りをぶつけろ。俺以外の奴に敵意を向ける事は、絶対に許さない。


しばらく、奴には会わなかった。ここ数日、外は雨。こんな時まで喧嘩を売りに行こうとは思わないが、俺は出かけた。
夕方頃だが、何となく外へ出た。

会いたい…。

無意識のはずの頭によぎる言葉。ぐしゃぐしゃにかき消して、外の空気を吸いに来ただけだと言い換える。

ふらふらと、気付けば町外れの荒れ地まで来てしまった。
やばい…無防備で来ちまった。引き返そう…っ?!

俺の足は動かなかった。
遠くの方から、傘をさす人影が見えた。小柄な少女…あの栗毛…。

「!……ぁ!!!」

向こうも俺に気付いたようで、その目には敵意が宿る…が。

…違うものが奴の瞳を輝かせていた。

「どう…した…?」
俺らしくねぇ言葉だが、放ってはおけなかった。ナツミは目を擦り、いつもの状態を必死に保とうとしていた。

「…あんたには関係ないでしょ?」

「何で泣いてんだ?」

俺の言葉に、ナツミの目が見開いた。
そして…。

「こ、きょうに…帰れる…方法を探しに…。」
ナツミの涙が、雨と同じくらい流れ出る。

こんな…こんな小さなものに俺は戦闘を仕掛けていたのか。
そうだ。実際ナツミと同世代の子供は、広場でツレと楽しくお喋りしたり、化粧や着飾ることに興味を示したりするところだ。こいつがただの子供じゃねぇことは、よくわかっているが。

「…っでも…ここのみんなと離れたくなくて…っでも、故郷も懐かしくって…みんなに言えなくって…ぅっ、ぐすっ。」

泣きじゃくるナツミ。今はただの子供になっているナツミに、俺の腕が自然に伸びる。

「泣くな。泣くんじゃねぇ…。」

二人の傘が落ちる。
俺の腕に抱かれて、少しは抵抗するかと思えば、ナツミの腕が俺の腰に巻き付いていた。

「ぅっ…ああぁぁ…。」
泣き続けるナツミ。


初めは瞳へ唇を近付け、涙を舐めてやるが、その内に唇同士が重なった。
泣きやませようとした。泣き顔は、こいつには似合わない。

「…!…ごめん…。」

謝罪の言葉はナツミからだった。何故謝るのかよく分からなかったが、俺は鼻先でまだ涙を溜めて潤ませている瞳にもう一度キスをする。

「ん…っ。」
「らしくねぇてめぇを見てると…イラつくんだよ…。」

乱暴にナツミの細い腕を引いていき、最初は嫌がりながらついてきた奴も町中に着いた時には、力ではかなわないと思ったのか大人しくなった。
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