☆文章☆
□●ヒーロー的存在●
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夜中の繁華街。酒を煽り、喧嘩をし、男は女を求め、女は男を利用する。銀髪の目付きの悪い男は、そんないかがわし過ぎる酒場の常連であった。
金には困らない。奪えばいいのだから。注文を伺いにきたウエイトレスに、余裕のチップをくれてやり、夜な夜な相手にしたかしていないか覚えていない女達をはべらす。
そこらにいるような男達の何もかもを上に立つ彼は、女にも困らない。
整った容姿、高い身長、破壊する為の力…。守る為に使ったことなどない。性格に関しては、性悪でしつこいが、それを面と向かってはっきり言う奴は一人だけだ。
VネックのベージュのロンTに黒いパンツ、ファーのついたジャケット。いつも服装とは、うってかわり完全にお兄系のナルシストは、似合い過ぎると思いながら一番騒ぐテーブルのボス的位置に座っていた。
そんないつもと変わらず、騒がしく酒を飲んでいると罵声が飛んだ。これもいつもの内に含まれている。
「バノッサ!!てめぇ、ぶっ殺してやる!!!」
筋肉なのか脂肪なのか、よくわからない程体格の良い大柄な男が、お供の男二人を連れて現れた。
――――――戦闘態勢。
バノッサの目の色が変わる。彼を取巻くほとんどの男達は、酔い過ぎて無駄に笑い転げてはしゃいでいる為、使い物にならない事が分かっているバノッサは、口端を不敵にあげて立ち上がる。
丸腰の状態ではあるものの彼の態度は横柄だ。
「なんの恨みだ?」
「俺の女に手を出しやがっただろう!!」
物語的にはよくある恨み事だが、バノッサは気にせず益々笑みをこぼれさせた。
「知らねぇな。どの女も自分から寄ってきやがるから、いちいち覚えてねぇんだ!」
高笑いするスマートな男に、わなわなと怒りに震える男が今まさに、喧嘩をするには狭い店内で一触即発の状態に陥っていた。はやし立てるギャラリー。
「ぶっ殺す!!」
やってみやがれ、と決めるところで高い声がさえぎった。しかもこの声にバノッサは聞き覚えがある。
「ちょっと待てーーー!3対1は卑怯なんじゃない!?」
見上げる店主を見事に無視し、意気揚々と喧嘩に割り込んだのは、カウンターの上で偉そうに指を指す、頬を真っ赤に紅潮させた少女ナツミだ。
あ、ああああいつ!!!はぐれ野郎!!?
動揺を隠しきれずに唖然とナツミを見つめるバノッサ。
彼の敵…のはずが、彼女はバノッサをかばっている。ナツミの足元にはお馴染みのメンバー。
「いいぞナツミー!!」
「アネゴいったれ〜!!!」
酔っ払い共が…煽ってんじゃねーっ!
チビデコの泥棒と額を隠すガキが口笛を吹いたりして、ナツミの勢いに後押しする。
「あたしが相手になってやる!!表出なっ!!」
完全にいつもの少し幼い感じが消えている。人格が変わる程酔っ払っているのか…。正直バノッサは不安になる。
こんなのが戦闘に加わっても…;しかも俺って気付かねぇのか??
「ちっ!クソガキが…