☆文章☆
□●僕らの愛のカタチ●
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本の一つでも読め。
落ち着き払った彼から言われた一言。
何回かもう言われたのかな?
思い出せないけど…そう、あたしは仕方なしに本部の図書室へ行った。
「おや、トリス。珍しいな、お前がここに来るとは。さてはまたネスティに言われたんじゃろ。」
ラウル師範。大好きな…あたしの父親代りの立派な召喚師…。
師範に少し笑って話を済ませ、奥の方に行くと古い本がたくさん並んでいた。ボロボロではないけれど、何となく年季を感じさせる。
高い位置にある本を見ようと、顔をあげて首を伸ばす。
後ろへ二歩、三歩とよろけると、本棚へ背中が当たった。パサッと軽快な音を出して一つだけ本が落ちた。
真っ赤な表紙で綺麗な本。
ここよ…聴いて。
声がした。
透明感のある、高く伸びた声。
ほとんど無意識でその本を取った。
誘われたといった方がいいかな。
あたしはそれが欲しくて、愛しくて…
借りる手続きもなしに、急いで部屋にこもった。
ページをめくる。
ある貴族のお嬢さん。
彼女は愛が欲しかった。
家族愛ではなくて
ただ、血の繋りのない愛情を。
それを知る為に、いろんな男性と夜を共にしだした。
だけど彼女はわからない。
まだよ。
まだわからない。
身体の熱とこの快楽以外の…満たされた愛情が欲しいの。
だからまだ……………………………………………だからもっと……………
もっと私を求めて!!!
トリスに本を読めと勧めたが…きっとあいつのことだから読みながら寝ているだろうな。
兄弟子の立場で、妹弟子にあれこれ言うネスティだが、最近は何かが違った。
ネスティ自体には変化がないのだが、トリスの外見に兆しが見えるのだ。
子供から大人へ成長する途中にいるトリスは、少し影を落として溜め息をつき、しまいには身体つき自体が丸みを帯びて柔らかい印象を持たせる様になった。
ネスティは戸惑うばかりだ。
どう接したら良いのか…分からなくなるな…。
いや、こんな気持ち…すぐ気にならなくなるさ。
そう思いこませて三か月が過ぎている事実を、ネスティは認めなかった。
悶々と考えるのも束の間。
ネスティはトリスの部屋の前まで着いてしまう。
少しの緊張を持ちながらも、トリスの部屋をノックする。