☆文章☆
□●純粋で凶暴●
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身体がもうもたない事を、幼い少年は理解した。そしていつまでも生き続けてしまう事も。
遠慮と哀れみで疎遠する両親。
自分なりの優しさしか与える事が出来ずにいる姉。
ああ、そうか。僕は…
居てはイケナイ存在。
存在すら自分で決める事が出来ない。
なんて残酷で無情な生を受けたのだろう。
少年イスラは悟る。
僕は…僕を消滅させる方法を探しに生きよう。
それしか、彼に残されていなかった。
ある島で、先生と出会う。その人は、イスラにとってあまりにも眩しく、羨しく、そして憎かった。
へらへら笑って…人間の汚い部分なんか何も知らないんだ。
だが、皮肉にも彼女が自分を消滅させる手立てなのだ。
そんなアティは言う。
生きているだけで、尊いのに…。
綺麗事…綺麗事ばかり!!なんて奴なんだろう!
イスラは憤慨する。
こんな奴、生かしておけない。
だが、関わりを持つにつれて、その綺麗事の裏には堅い決意がこめられていることを知る。
この人は…人間の闇を知り、またそれを理解して認めた上で言っているのか…。
ある晩、あんなにも嫌悪していた彼女にイスラはどうしても会いたくなった。
彼女の汚れを見たい。
海岸をしばらく歩くと彼女は大きな岩の上にたたずんでいた。
月明りに照らされて、髪を風になびかせて、真っ直ぐに夜空へ見つめるその瞳に曇りはない。
剣技の稽古をしていたのか、手には使い古した剣が一筋。
「それで僕を突いてしまえばいいのに。」
暗がりの中で紅い瞳が見開いた。整った優しい顔がイスラへと向く。
「イスラ…。こんな夜中に…。」