ギアス短編4

□キセキ
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"1つだけ奇跡をあげましょう"

"だって今日は特別な日ですもの"








「アッシュフォード学園」

と、掲げられた門を見ながら、ルルーシュは微かに頬を緩めました。

懐かしい場所。
大事な場所。

そこは、変わらず記憶のままにそこにありました。

それがルルーシュにとっては少し嬉しかったのです。


ルルーシュは、懐かしさに焦がれて門のほうへと足を向けました。




門を潜ると、ルルーシュの胸の中にはさらに懐かしさが溢れました。

景色、校舎、クラブハウス。

すべてが記憶の中のそのままに、そこにありました。


そのことが嬉しくて、ついつい辺りをキョロキョロと見回しました。

だから、前から人が歩いて来たことに気付きませんでした。

「…っ!」

気付いたときには、前から歩いてきた生徒は目前に迫っていました。
避けようにも避けきれず、ルルーシュは衝撃を予期して思わず目を瞑り「すみません」と謝ろうとしました。

ですが、訪れるはずの衝撃は一向に訪れず、生徒はまるで何事も無かったように去っていきました。

確かに、ぶつかったはずなのに。
ルルーシュは首を傾げました。

だけどすぐにあることに気付き、近くにある木に手を当てました。

でも、

―するり

と、
手は木の表面をすり抜けてしまいました。

「なるほど」

その様子を見ながら、ルルーシュは納得したように頷きます。
突然のことと、懐かしさに鈍っていた頭が漸く追いついてきたと、ルルーシュは感じました。










"貴方に贈る、奇跡はね…"



"貴方が今日一日だけ、生き返る奇跡よ"



"だけど奇跡を起こすには、条件があるの"



"今でも貴方のことを大切に思っていて、今日が終わるまでに貴方を思い出して貴方の目の前で貴方の名前を呼んでくれる人がいることよ"











冴えてきた頭で魔女の言葉を思い出し、「つまりは条件が満たされるまでは幽霊みたいな状態か」とルルーシュは呟きました。

透けた手と、気付かず去っていった生徒。
起こったことを考えれば、ルルーシュにはすぐに見当が付きました。


となれば、学園内を歩き回ることも容易いでしょう。

ルルーシュは微かに笑みを浮かべて、再び学園の方へと足を向けました。

生前の自分が生身のままに歩き回るなんて出来ないことです。
"奇跡"は別としても、懐かしい学園を歩き回れるのはルルーシュにとっては密かに嬉しいことでした。
ですから、この姿を目一杯活かそうとルルーシュは思ったのでした。




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