ギアス短編2

□目覚め、空の彼方へと還る
3ページ/10ページ



あの日はコーネリアとシュナイゼルの連合軍との決戦の日だった。


前々から、かなりの数を叩かれ、黒の騎士団は非常に危うい状況にあった。

でもゼロが中心となり、何とか作戦を組み上げてコーネリアとシュナイゼルの連合軍に立ち向かった。



その日、ゼロの様子がおかしかったのをカレンは良く覚えている。



『カレン、おまえにこれを託す』


そう言って渡されたのは、一つの真っ白な造花だった。


『ゼロ?』


不思議に思ってカレンが名を呼ぶと、ゼロは静かにこう言った。



『いつか…、その花に相応しいと思った者が現われたら、それを渡してくれ』



それにカレンは益々わからなくなる。


でも、その言葉はどこか遺言めいていて…。

カレンはどうしようもなく怖くなった。



でもゼロの命に反する言葉を言えるはずもなく。



『わかりました』


カレンはしっかりと頷いた。





その日、ゼロは自ら戦場へと赴き…、そしてシュナイゼルが密かに放った刺客の銃弾の嵐に巻き込まれた。



その瞬間をカレンは今でも覚えている。





死んだ、


そう思った。




だって、あんな…衝撃の中で生きているとは思えなかったのだ。





それを見て、騎士団には絶望が広がった。




これで終わりだと。

ゼロを失えば、ただでさえ危うい『黒の騎士団』は潰されてしまう、と。




そう、誰もが思った。






でも。




ゼロは3日後に、帰ってきた。





『何事も』なかったように。






それからだ。


『ゼロ』が変わったのは。






「貴方は、確かに『敵』に容赦が無かった。でも、今は…どこか、違う気がするんです。それを、説明しろと言われるとわからないのですが…。ただ…」

「ただ?」


ゼロに促され、カレンは一呼吸置いてから再び口を開く。



「ただ、『平和な世界』を前よりずっと望んでいるように思えて…。それに、それを邪魔する人を容赦しなくなった。まるで…何かに急いているように」




カレンの指摘にゼロは再び空を見上げた。

まるでゼロの求めるものがそこにあるという風に。



カレンもゼロと同じように空を見上げた。

でもカレンには『空』しか映らない。


ゼロと同じものを、カレンには見ることが出来なかった。



それがただ、

その目に見えないものが。


『ゼロ』の答えの様に思えた。




『目覚め、空の彼方へと還る 〜空〜』



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ