ギアス短編2

□目覚め、空の彼方へと還る
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僕はあの日、すべてを知った。

君がくれた最期の言葉によって。




大好きだよ。

僕も、大好き。










空を眺めていたc.c.は、ゆっくり目を閉じた。



過去を、偲んで振り返るように。







それはこの決戦が始まる前に遡る。








「これがおまえの望んだことか?」


ただ只管、『王』の命じるまま眠り続けるスザクの傍らに立つルルーシュに、c.c.は静かに尋ねた。

だがその声は鋭利な刃物の様に鋭く、貫くものがあった。


その声に、ルルーシュは静かに目を伏せる。


逃げるわけではなく、怒るわけでもなく。

だた、目を伏せた。
それだけだった。






それに対しc.c.は、己も目を伏せた。




何も。

何も言わずともわかっていた。





彼が、

目の前の彼が『本当』に望むことが『それ』ではないことくらい。






「馬鹿だな」



本当に。

馬鹿だ。




「馬鹿げている」



こんな、





「わかっている」



愚かな道を辿るなどと。




「でも、




それでも、おまえは。




「それでも、スザクには…こんな世界で生きて欲しくなかった。こんな…悲しい、汚い世界で…」




c.c.は微かに俯いた。

まるで、ルルーシュの言葉の一片を確かめるように。


そして、


「本当に、馬鹿だ」


そう、呟いた。




その言葉を受けた後、ルルーシュは徐に立ち上がりゼロの仮面を取った。



「行くのか?」


「あぁ」




尋ねた声に返ってきたのは、確かな決意のもの。


きっと、これが最後になる。


本当に、最期の。



「死ぬぞ」

それでも、行くのか?とc.c.は敢えて尋ねた。

それにルルーシュは…ゼロは確かに頷いた。


「枢木スザクを置いて?彼がどうなるかもわからずに?」


「あぁ…」



あぁ、本当に

「馬鹿だ」



「わかってる。嫌というくらい」



c.c.は不意に泣きそうになった。

自分で嗾けたはずなのに。

何故か悲しくなった。



「スザクを…頼む」


最期に聞いたのは、そんな懇願にも近い声。



ゼロが去った後、c.c.は初めて涙と呼ばれるものを流した。






『目覚め、空の彼方へと還る 〜遺言〜』




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