頂き物
□美桜様より
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『〜この世で欲すは誰が為か〜』
「ほら、スザク。リスト106の魂だ、連れていけ。」
スザクに向かってルルーシュは掌にある魂を差し出した。
「ありがとう。ルルーシュ」
受け取った魂を大事そうに抱き込み、微笑むその姿はまさに誰の目からみても天使の様だった。
彼が漆黒の衣を身に纏っていなければ、の話だが。
そんなスザクを眩しそうに目を細め、みつめるルルーシュ。
「そいつは愛娘を事故で失い、無理矢理本来の寿命を縮めたらしい。死後の世界でまた会えると信じてな。…馬鹿なやつだ。」
「ルルーシュ!そんな事を言っては駄目だ!!確かに生きる事を放棄するのは許されない。でもこの人の気持ちを否定する様な事を言っては駄目だよ!」
つい先程まで生とゆう刻を刻んでいた魂を愛しげに、そして切なげにみつめながらスザクは言葉を紡ぐ。
「…そうだな、悪かった。とにかく今日のノルマは終了した、帰るぞ。」
そんなスザクを宥めるように、彼の身体を魂ごと引き寄せ、柔らかい髪にキスを一つ落とす。
「うん。そうだね。」
二人の身体は徐々に霞み、そこにはもう何も残ってはいなかった。
「今日もお疲れさま、ルルーシュ。」
窓辺で静かに月を眺めていたルルーシュにスザクは温かい紅茶を差し出す。
「ああ、ありがとう。」
「少しだけブランデーを入れたからすぐに身体があったまると思うよ。」
二人で寄り添いながら夜の静寂に身を委ねる。
ここは二人の屋敷で周りの敷地も彼等の所有であるため、近くには誰もいない。スザクとルルーシュにとって最も安らげる場所だった。
「ねぇ、ルルーシュ。」
スザクはルルーシュの肩に自分の頭をくっつける。
「ん?どうした?」
「今日、連れていったあの人…もう娘さんには会えないのかな?」
「それは、俺よりお前の方が、ずっと良くわかっているはずだろう?」
スザクの髪に顔を埋め、ルルーシュは彼の耳元で甘く囁く。
「魂を導く死神のお前の方が。」
ルルーシュの言う通り、スザクは死神だった。
死ぬ運命にある魂をその時期が来たら回収し、次の転生を促す。
万が一、あまりの狂暴さゆえに転生をさせるのが危険と判断される魂が出現した場合は、その魂を消滅させる任も負うことになる。
そして、そんな死神の職務を補佐するのが執行代理人たるルルーシュの役目。
ルルーシュは人間であるため、本来はスザク達死神と同じ時間枠を生きるのは不可能だが、死神であるスザクと契約をする事により、それが可能になる。
「わかってる…わかってるけどっ、でもっ」
死後の世界とゆう物は人間が勝手に作り出した世界で実際には存在しない。 在るのは次の転生を促す人間には理解できない場が存在するだけだ。
頭ではわかっていても、スザクの心が追い付いて来ないのだ。
「いつも言っているが、お前は優しすぎる。あまり自分を追い込むな。」
ゆっくりとスザクを抱え直し全身を包んでやる。
少し落ち着いたらしいスザクを確認し、再度声を掛ける。
「あいつはまた娘と会えると信じて死んだんだ。本望だろう。実際笑ってたしな。希望も何もなく死んでいくやつらより、何倍も幸せだったさ。」
「…本当に、笑ってた?」「ああ。」
翡翠色の大きな瞳に投げ掛けられた質問に、アメジストの瞳を持つルルーシュは相手を安心させる様に微笑みながら答えを返す。
「そっか、良かった。」
「だから、スザクがそんなに心配しなくても大丈夫だ。」
「うん。ルルーシュがいてくれて本当に良かった。」
ルルーシュに甘える様に更に抱きついてくるスザクを更に強い力で抱き締めるルルーシュ。
「ずっと側にいてね?」
「もちろん。」
二人の密やかな笑い声が部屋の中に響いた――