頂き物

□美桜様より
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『汚れ無き道化師』




喜び



怒り



悲しみ



楽しさ



人間なら当然持っている



感情という代物



普通、そこには策略も陰謀もありはしない



しかし



絶大な権力を握る当主となれば話は変わってくる



彼等にとっては感情すらも戦術の内



使える駒の一つに過ぎない


それこそが当主たる者の常人とは違う



最たる証



人でありながら



人である事を許されぬ



特別である事を強要される


歪な存在



彼が救いを求め



手を伸ばした時



その手を握るのは



『歪み』を愛する



優しくも残酷な



悪魔だった



「よし、こんなものか。」

ルルーシュがスザクの部屋で全ての準備を終えた瞬間

精巧な紋様が施された品の良い扉が静かに開く



「…ルルーシュ…」



そこには無表情のままこちらを見つめるスザクの姿が


「お帰りなさいませ、当主様。」



ルルーシュはスザクに歩み寄り、その体を抱き締める


「…そしてお疲れ、スザク。」



「…うん、ただいま。」



スザクの顔が自然に綻ぶ



すっかり体の力を抜いてしまった愛する主人をルルーシュは壊れ物を扱うように、慎重に抱き上げソファーに座らせる



そしてその前に跪き、スザクの手を取り、尋ねる



「何がしたい?」



黙ったままのスザクの返事を辛抱強く待つルルーシュ


そしてようやくスザクの口が動きだす



「お風呂に入りたい」


「もう湯を張らせてあるからいつでも入れる。」


「お腹すいた」


「お前の好物は全部そろってるぞ。」


「ネコと遊びたい」


「下の部屋に何匹もいる。どいつもしっかり調教されたヤツを選んできたから触れるからな。」



その他にいくつもスザクは頭に浮かぶモノを全部口に出していったが、どれもこれもルルーシュは全部用意してあると言う。



「ルルーシュ、相変わらず凄過ぎ。それじゃあ僕何からやれば良いのかわからないよ。」



「別に悩む必要はない。全部やれば良い。今までにスザクが言ったやりたい事はすべて覚えているから問題ない。」



スザクの手をゆっくりと揉み解しながらルルーシュはあっさりと答える。



「全部やったら一日じゃ終わらないよ。」



くすぐったそうにしながらも手を振りほどこうとはしない



「じゃあ明日もやればいい。お前の望みは全部俺が叶えてやるから。」



「…それも良いかもね…」


「かもじゃなくてやるんだよ。主人のスケジュールを管理する執事の俺が良いといってるんだ。」



スザクの傍から離れ、衣服の入った棚に向かうルルーシュ。



とりあえずスザクが言った順番通りに実行するつもりらしい。



「何か、今の僕って凄い我儘当主みたい。」



「どこが?普通だろ。俺としてはやっと執事としての仕事をやる事が出来て嬉しいですよ、ご主人様?」



スザクの会話に付き合いながらもルルーシュは次々と必要なモノを準備する。



といっても、スザクが帰ってくる前にほとんど準備は完了しているので、確認するだけなのだが。



「せっかくだから、何か入れると良い。リラックスできるぞ。」



スザクの手元に色とりどりのバスキューブが入った箱を置く。



「お前の好きなヤツを入れてくるから選べ。確かオレンジとか気に入ってなかったか?」



前回バスキューブを使った時、オレンジのキューブをスザクがとても気に入っていた記憶がある。



しかし、ルルーシュの予想とは裏腹にスザクが選んだのは



血の色をした真っ赤な球体


薔薇のキューブだった






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