ギアス短編3

□子守唄
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君の夢が悲しい唄で溢れないように


僕は君の隣で唄い続ける



君の安らかな眠りを祈りながら


君の隣で




どうか、

君の夢が優しいものでありますように

















『子守唄』















『今日は一緒に寝ていい?』

そう言ってきたのはスザクだった。

思い出されたのは昨日のこと。



マオに暴かれた真実。

過去の罪に怯えるスザク。



『いいぞ』

それを思い出すと、自然とその答えが口に出た。


その瞬間、スザクの表情が少しだけ和らいだ。
ついさっきまでは、本当に苦しげな顔をしていたけど。

一緒に寝る。
ただそれだけでスザクの気持ちが少しでも晴れるなら、いくらでも一緒にいる。

それが、俺に出来ることなら。
スザクが俺に、望むことなら。


それしか…出来ないから。


『ありがとう…ルルーシュ』

そう言って笑うスザクを、俺は布団の中に招き入れた。


もう、寝ろ。
そう言いながら。



もぞもぞと入ってきたスザクを迎え、俺も隣で寝転がる。


『何だか、子どもの頃を思い出すな』

そんな時、突然スザクがそう話しかけてきた。

その言葉に、俺も子どもの頃を思い出す。


あの頃は何の気兼ねもなく一緒に寝たりした。

隠れてこそこそ、内緒にしながら。
それでも楽しくて、一緒に寝た。

そんな、優しい思い出。

『そうだな』

それを思い出して、俺は笑った。

何より、大切だったあの頃の思い出。


優しい…大切な。


『ルルーシュ』

ふとスザクが俺を呼ぶ声が聞こえ、俺は隣に眠るスザクを見た。


スザクは、笑っていた。
どこか寂しげな笑みで。


『楽しかったよ、あの頃は』

『スザク』

『楽しかった…。大切だった…。ずっと、続くと思ってた』

『…あぁ。俺もだ』


そこで言葉を切り、スザクは切なげに俺の手を握った。


『でも…続かないんだよね。幸せなんて』

『…』


その言葉を遮るように、俺はその手を握り返す。

だけど、スザクはやめなかった。

『続かない…。だから、僕は…僕は、父さんを…』

『スザク!』

今度こそ俺はその言葉を遮った。

『もう、言うな。言わなくていい』


そう言うと、スザクは微笑んだ。

それは、悲しそうな笑みだったけど。


『ありがとう…ルルーシュ』


次に紡がれたのは、感謝の言葉。


違うんだ、スザク。

俺は逃げただけだ。

お前から、その真実を聞きたくなくて。

逃げただけなんだ。



『もういい。寝よう』

そう言って俺は本当に逃げるように電気を消した。

そうだ、逃げたのだ。


『あの日』の様に。



『おやすみ、スザク』

『おやすみ…ルルーシュ』



俺たちはまた触れ合えないまま。

眠りに誤魔化し、逃げるんだ。




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