ギアス短編3

□バレンタイン・イブ
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明日は運命の日。


あなたは誰にチョコを贈りますか?

















『バレンタイン イブ』













「何をしているのだ?」

c.c.は台所から匂ってくる甘い香りに顔を顰めながら、その匂いの元となっているであろうルルーシュに尋ねた。

だがルルーシュはいつになく真剣で、c.c.の話などまるで聞いていないようだった。

それにc.c.は腹を立てる。
こっちがわざわざ聞いてやっているのに。


端から見れば自分勝手な物言いだが、ここは魔女様。
素直に聞いておいたほうがいい。


「おい、聞け」

そう言うとc.c.は思いっきり傍にあったボウルをぶん投げた。


「ぶっ!」

時速何キロあるだろうかわからないほど早く投げられたボウルは、見事ルルーシュの頭にクリーンヒット。

そのあまりの痛さに、ルルーシュは身悶えるが、気絶するまでには至らなかった。
それを感心しながら、c.c.はルルーシュに再び問い掛ける。

「で、何を作っているんだ?」

「その前に言うべきことはないのか」

あまりにマイペースなc.c.の物言いに、ルルーシュは体をわなわなと震わせながらc.c.に向き直る。
頭に大きなたんこぶを作りながら。

だがそんなルルーシュを見ても、c.c.は臆することなく答えた。

「ない」

「あれ!」

ルルーシュは即座に言い返すが、それもc.c.には通用しない。

「そんなことより、さっきから私が質問しているのだからさっさと答えろ」

相変わらずマイペースなc.c.に、ルルーシュはぷつんとどっかの線が切れそうになるが、所詮魔女様には敵わない。
ここは大人しくc.c.の問いに答えてやることにした。


「見てわかれ。お菓子を作ってるんだ」

ルルーシュの答えに、c.c.はルルーシュの前に置いてある『お菓子』に視線をやる。
だがそれを見た瞬間、c.c.は微妙な顔をしながらルルーシュのほうを見た。

それにルルーシュは怪訝な顔をして尋ねる。

「何だ、その顔は」

「…わからんのか、理由が」

そうc.c.が尋ねるものの、ルルーシュは訳がわからず首を傾げるだけ。
その様子を見て、c.c.は大きく溜息をついた。

やっぱり、と阿呆だ。

そんな意味を込めながら。


ルルーシュはc.c.の様子を見て益々訳がわからないと、顔を顰める。

c.c.は改めて溜息を吐き、仕方ないといったふうに答えた。

「…よーく見てみろ。それは明らかにおかしいだろう」

「…」

c.c.の言葉に促されるように、ルルーシュは自分の作ったお菓子を見る。
だが、やはりルルーシュは首を傾げるだけ。

「どこがおかしいんだ」

その答えに、c.c.は呆れることすら超えて、遠い目をし始めた。

だって、c.c.の目の前にあるのは。




「このウエディングケーキ(チョコレートver.)のどこがおかしい」

いや、おかしいだろう。

しかも凝りに凝っていて、5段重ね。
そしてデコレーションも凝っており、薔薇の細工ですらチョコで作られている。

おかしい。
おかしいだろう。

しかも作っているのが、普段クールを気取っている坊やだぞ?

おかしいにも程があるだろう。


そしてそれを本人は気づいていない。



c.c.は5段重ねウエディングケーキ(チョコレートver.)を眺めながら、もはや遠い世界にいきかけていた。



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