ギアス短編3

□略奪者は笑う
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大切なものは奪う

それが


逃れられぬ、血の呪い














『略奪者は笑う』












「お兄様…」

「大丈夫だよ、ナナリー」

切なげに笑うナナリーの手を、慰めるように撫でた。

撫でながら、もう一度窓の外を見てみると、そこには優雅に立つユーフェミアの姿。
その顔には笑顔が浮かんでいる。



その顔を見て、ルルーシュはただ怒りを覚えた。

憎い。
憎くて仕方ない。



『特区』をつくることを宣言し、ゼロが立つ理由を奪った女。

スザクを騎士とした女。


…俺の居場所を、ナナリーの心の拠り所を奪った女。






憎しみだけが、心に溢れた。





許せない。
許せない。



悉く、奪っていくユーフェミアに。

それも無意識に、すべてを手に入れていく。




許せない。
許せない。





許すわけにはいかない。





「お兄様、」
「ナナリー」

ルルーシュは不安げに揺れるナナリーの言葉を遮り、名を呼んだ。
そして、笑う。

いっそ恐ろしいほど美しい笑みで。

その気配を感じ、ナナリーは微かに震える。
目が見えないが故に、わかるその気配に。

ナナリーが一瞬震えたのに気づきながらも、ルルーシュは笑った。

残酷に。

「大丈夫だよ。取り戻すから」

「とり・・戻、す…?」

そうだよ、とルルーシュは頷いた。

一瞬わからなかったが、ナナリーには心当たりがある。
取り戻す、と兄が言ったものに。

「ま、さか」

ナナリーが言い切る前に、ルルーシュは強くナナリーの手を握った。
それが、肯定であり答えであるといわぬばかりに。


あぁ…。
ナナリーは嘆いた。

兄が壊れてしまったと、思ったから。

「取り戻すから…」

兄は相変わらず笑っていた。



ナナリーは泣いた。
苦しくて。
悲しくて。


「スザクさん」

そんなとき、無意識に呟いたのは大事な人の名前だった。

たった一人、兄を助けられる人。
支えられる人。


「助けて…」


届かないと知りながらも、でも呼ばずには居られなかった。


―傍にいる兄から流れる雰囲気は、数度しかあったことのない父によく似ていた。



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