ギアス短編4
□engagement
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指輪に誓った、
その約束を、決して忘れない
『engagement』
「おまえには婚約してもらう」
すべては、その言葉から始まった。
それはまだ母を喪い、喪も明けてない頃だった。
「は?」
唐突な言葉を聞き、思わず気の抜けた答えを返したのは『ルルーシュ』という名の少年。
今年で齢10歳の少年だ。
付け加えるのなら、『ブリタニア』という帝国の人種であり、その帝国の皇子である。
そんな帝国の皇子とは思えぬ答えを返したルルーシュにそれを告げたのは、ルルーシュの父たる帝国王・ブリタニア皇帝。
「婚約してもらう」とは。
「父上…それは、一体…どうい、う…?」
「おまえはその程度が理解できぬ頭しかないのか?」
その言葉に、ルルーシュは頬を引き攣らせる。
ルルーシュは同年代の子どもよりよっぽど頭の切れる子どもである。
だが所詮は10歳の子どもだ。
完全に心を隠し切る程、精神は発達していなかった。
…それに。
「父上!言葉の意味くらいは理解できます!!私が言いたいのは…、母が…っ」
怒りのままに父に向かって叫ぼうとすると、皇帝は有無を言わさぬ瞳でルルーシュを射抜いた。
それにルルーシュは、思わず息を詰める。
怯えた瞳で自分を見ている息子を酷薄な目線で見やりつつ、皇帝は言った。
「おまえの意見など、露にも満たぬ」
それだけ言えば、用は済んだといわぬばかりに皇帝は振り返った。
そんな父の様子に、ルルーシュは血が滲むのも憚らず唇を強く噛む。
自分の不甲斐なさと、父の冷酷さを身に染みながら。
「おまえには明日にでも日本へと発ってもらう」
去り際、父王が静かに呟いた。
それは、ルルーシュの意見など無い。
《決定》であった。