ギアス短編4

□風邪の特効薬
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第99代ブリタニア皇帝=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは執務に追われていた

次々と舞い込んでくる書類をこなしながら、傍の大臣に渡していく様はまさに皇帝

威厳と風格を称えた、王の姿だ


そんな第99代ブリタニア皇帝=ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの元に、ある一報がもたらされたのそのすぐ後だった

























『風邪の特効薬』






















「大変です、皇帝陛下!!」

ばたーん!と効果音が付きそうな勢いで執務室の扉を開け放ったのは、スザクの部下だったはずだ。
それを思い出しながら、「何事だ」と飛び込んできた者へと声を掛ける。

王の威厳ある声に男は思わず萎縮するが、慌てて強張った口を開いた。


「そ、それが…っ、ナイト・オブ・ゼロが…!」


瞬間、バーン!!と何かがぶち壊れそうな激しい音が室内に響く。
ビリビリと耳の中に響く音に眩暈を覚えながら、慌てて視点を合わせれば、王族のものにしては簡素な机に両手を付き立ち上がった皇帝の姿。
「あぁ、皇帝が机を叩いたのか」と部下が理解したと同時に、俯いていた皇帝が視線を上げる。

視線で人を殺せるというなら、こんなものだろうか。

そう思わず思ってしまった程の身も凍えるような視線を向けた皇帝は、何とも言えない覇気を放ちながら低く感情を押し殺したような声で呟く。

「…それで、我が騎士ナイト・オブ・ゼロがどうした…」

低く鈍く響いた声と『我が騎士』という言葉から、押し殺し切れていない感情が感じられる。
自身の騎士のことに対しては、冷静でいられないのだろう。と、傍に控えていた皇帝の側近は思った。
だが騎士の部下はそんな余裕は無かったらしく、皇帝の覇気に当てられ完全に萎縮してしまっている
その姿は同情を誘うような哀れなものであったが、周りの見えていない皇帝にはそれを気遣う余裕は無いらしい。

再び卓上を全力で叩いた皇帝は、その勢いのままに吼えるように叫ぶ。

「さっさと"俺のスザク"がどうしたかを言え!!」
「はいぃぃい!!!」

ついにキレた皇帝に、あまりの恐怖に硬直していた騎士の部下は慌てて続きを報告する。

「ナイト・オブ・ゼロが、熱を出し倒れまし…!「それをもっと早く言わないか、馬鹿者め!!!」
「すみませーん!!!!」

部下が言い終わる前に叫んだ皇帝に、部下が土下座せんばかりの勢いで謝ってから僅か1秒。
あまりの怒りオーラに思わず目を瞑っていた部下たちが、再び目を開けるころにはすでに皇帝の姿は室内のどこからも消えていた。

残ったのは無残にも散らばった書類と、唖然と立ち尽くす王と騎士の部下たち。

「…し、仕事は…」

数秒後、漸く硬直から逃れて慌てて上司が去ったであろうドアの方へと手を伸ばしてみるものの、時はすでに遅すぎた。


その後さらに数秒を擁して、どうにか諦めた側近の男は騎士の部下からの「すみません」との謝罪を受けながらのろのろと散らばった書類を拾い上げた。
そこで、ふと気付く。

てっきり未処理だと思われた書類には、しっかりと皇帝のサインが書かれている。

「…皇帝…」

側近は思わずここにはもう居ない自身の上司の名を呼んだ。

自分の気持ちに突っ走りながらも、自分の役目は果たす。
その心意気は感嘆するものである。

でも…。

「一体、どうやって…」

まるで奇跡のような所業に、側近たちは首を傾げる。

取り残され只管首を傾げる2人の耳に、「僕がついてるよ、兄さん!」という天からの声が聞こえたような気がした。



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