ギアス短編4

□キセキ
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"1つだけ奇跡をあげましょう"


と、魔女は少年に言いました



"何を?"

と尋ねた少年に、魔女は嬉しげに頬を緩めます

そして不思議と首を傾げる少年に、魔女はそっと手を伸ばし少年の頬に触れました


しばらくすると、少年は目の前が段々目の前がぼやけていくのを感じました
慌てて少年は目を擦りましたが、少しずつ目の前が暗くなるのは一向におさまりませんでした

段々下がる目蓋を擦り続ける少年に、魔女はさらに頬を緩めました


そして、まるで子守唄を唄うように、まるで魔法を唱えるように

そっと、囁きました―




















「キセキ」



















目が醒めると、それはまるで夢のようでした。


目が醒めたのに夢のようだ、と言うのは可笑しな話ですが、少年にとっては本当に夢のようだったからです。


少年の目の前に広がるのは、通りを行き交う人々の姿。

それは、少年が"生きていたときの世界"でした。




少年の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。

生前は神聖ブリタニア帝国の皇子として生まれましたが、決して幸せばかりの日々とは言えぬ人生を送り、若くしてこの世を去った少年でした。

でも、彼には後悔はありませんでした。
幸せといえずとも、彼にとっては満足した人生だったからです。


―例え自身が「悪」として名を残したとしても、です。

彼は満足してこの世を、目の前に広がる世界から去ったのです。


ですが、どうしたことでしょう。

今、目に映るのは去ったはずの世界。
彼が生きていた頃の世界でした。




…いえ、どうやら少し違うようです。

よくよく見てみれば、今彼の立っている場所は彼自身の記憶の場所とは少し違うように見えました。

違和感を持って辺りを見渡せば、ふとルルーシュはあることに気付きました。


見えたのは、時刻と年月を示す時計の表示板。
そこに映し出されていたのは、彼が、「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」が死んでから3年ほど過ぎた時だったのです。


"なるほど"と、ルルーシュは思いました。

自身が死んだ後、3年後の世界。
少々の違いがあるのは当然でしょう。

時は流れ、人も場所も、変化していくものなのですから。


ルルーシュは改めて周りを見渡しました。

覚えあるもの、目にしたことの無いもの。
いろいろなものがルルーシュの目に映ります。

変わった街並み。
変わった人々。


でも、ルルーシュにとっては懐かしさの方が上回りました。


何故ならここは―

ルルーシュにとってはとても思い出深い大切な場所だったのです。





ルルーシュの目の前には1つの建物。



生前の記憶のままに建つその建物の門には、

「アッシュフォード学園」

と、刻まれていました。




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