novel『ハガレン』Vol.1短編N

□SUNDAY
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今日は久々の休日。


「たまにはのんびりと映画鑑賞でもどうかな?」

今までにないロイの薄気味悪い提案。

エドは妙な画策でもあるんじゃなかろうか、と一抹の不安を抱きながらも、肯定の返事を返した。


問題の当日。

どこからか借りて来た映写機のセットをいそいそと組立ている姿は、予想だにしないぐらい不気味だった。

「で、何の映画なワケ?」

テープにタイトルのラベルは見当たらない。

「さぁ?適当に借りたからなぁ」

「誰に?」

「ヒューズから」

それならまともな内容かも知れない…と、エドは安心した。のも、後に間違いだと気付く。

「やっぱり…」

甘々な恋愛モノ。思わず砂を吐きそうな程の。

「さすがヒューズの趣味だけあるな…」

閉口してるのはエドだけではない。ロイもだった。

ただ、エドよりかなり大人なロイは、いろんな恋愛の形型を経験してきている分、免疫はある様子。

「悲しい恋だな…」

そう言われてもエドにはピンとこない。

ストーリー展開にも着いていけず、一人退屈を手持ち無沙汰していた。

持て余す時間がつまらなさを増大する。


ツマラナイ…


外はこんな快晴だって言うのに、部屋にこもって何してるんだろ…しかも、健全な男二人。何やってるんだろ…?

ぼんやり聞き流していた映画のワンシーン。

ふと、エドの口からついて出る言葉。

「なぁ、大佐。一つ聞いてもいいか?」

割りと集中しているロイは、画面から視線を動かさず、短く聞き返した。

「何?」

「大佐は俺のどこが好きなの?」

スクリーンの中のヒロインの台詞を借りて。

並んで見ていたロイの右手が、エドの左手に添えられる。

「似た台詞を先程聞いたな。急にどうした?」

「…なんとなく」

飽きたから、とかは言えるはずはない。

あんなに楽しそうにしているロイの表情は久しぶりだったから。

それに、ちょっとだけ不安にもなった。

女性との浮き名が激しかったと噂されてきたロイが、何で自分みたいな子どもと居て、しかも男で。

可愛いげがないのも、自覚はしているつもりだった。

喧嘩も絶えないし…

こんな自分と居て大佐は楽しいのだろうか、と。

見えない過去の恋人に、少なからず嫉妬もしている。

「大佐がどう想ってるのか、聞きたい…ダケ」

「ふむ…」

映画の再生を一時中断して、ロイはまじまじとエドを見つめてみる。

−改めて言われると…なるほど、これは難題だな…

嘗め回すように、頭の先から足の爪先までをじっくり眺めた。

「そうだな…無愛想、傍若無人、不器用、無作法、不躾、無礼、不調法、無自覚、無知で無茶で…」

「なんだよ!欠点ばっかりじゃないか!!」

憤懣やる方ないエドが吠えた。
ロイの膝の上で抗議を捲し立てる。

「口は悪いし、性格も捻くれてるし…」

「だぁー!!もう分かった!!いいよ!もう!!」

ロイの胸倉を掴んで揺さ振っていたエドが、ドカドカと隣の部屋に消えた。

−小さいくせに態度は尊大だし、横暴だけど…

ロイは隣室をこっそり覗き見る。

「エド」

「フン!!」

名前を呼んでも背中を向けたまま。
口を尖らせて拗ねる姿はとても愛らしい。

「エド…」

わざと足音をさせて近寄る。

むくれたエドを頭から、背中越しに抱きすくめた。

「暑苦しい!離れろっっ!!」

「愛してる…エド」

耳を掠めるロイの言葉に反応して、真っ赤に染まった耳たぶを一舐め。

「コ、コ、コラ!!今日は何もしないって約束…っ!!」

「聞き分けないのはドッチだ?」

「ちょっ…ま…っっ!!」

うなじを責められながら、上着の中に無遠慮なロイの両手が侵入する。

「ちょっっ…!!や、め…!?」

「好きに理由はいらないよ。ただ、感じればいいんだ…」

「…ま、た…かっ、てな…!」

背後を取られていては身動きもつかない。

エドはいつもの様に快楽に身を委ねるダケ。

「あ…っっ!!」

「そう…その表情だ…」

”唯一無二の私の愛する存在”


END
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