戦国無双夢

□恋する女は美しい
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「丁」


「…やるな…お嬢」


城下町の賭博場で博打を打つ二人の男女。
女は最近評判の茶屋の看板娘の鈴で男は大柄の老人、九州の豪勇島津義弘である。


「汗水流さずに大金が手に入ったわ」


博打で一両から百両まで増やしたお金を眺める鈴の顔は至って普通だった。


義「また次回勝負を願おう」


ゆっくりと立ち上がるとそのまま部屋を出る島津義弘。
鈴も立ち上がり優雅に立ち去る。


周りの連中は二人の纏う雰囲気、動作に圧倒されただ黙って見守っていた。
対照的に近い二人の勝負は瞬く間に賭博の世界で評判になった事を二人は知らずに…















そして二人の縁はまだ切れず…

その日の夜に再び会うことも当然だが二人は知らない…






















今宵大阪城は豊臣の完全なる天下統一達成の宴が開かれていた。
大名、家臣、従者、今宵は皆無礼講で酒を飲み交わす中、娘と鬼の姿もあった…
祖父と孫に近い二人は周りの人からみたら異様だった。


「先程振りですね、鬼のお爺さん」


義「また会うとはな、お嬢」


「ふふっ」


静かに月を眺めながら酒を飲む鬼に晩酌をする。


「それ、焼酎ですか?」


義「いかにも。豊臣への献上品だ」


「薩摩は焼酎が名物ですものね」


義「お嬢は話が分かるな」


「私が一番好きなお酒は焼酎ですから」


鈴に盃を渡し酒を注ぐ義弘。
頂戴します、と言っては久方ぶりの焼酎を一気に流し込む。


「美味しいけど、強いですね…」


義「お嬢にはまだ早かったか?」


「あ、子供扱いしましたね」


義「わしからしたら子供だ」


豪快に笑う義弘。
鬼と呼ばれる島津義弘と対等に酒を飲む年若い娘の光景に通りすがりの人は驚き、そしてすぐに噂となって城内に知れ渡る。















勿論、鈴の事を想う皆にも…

















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