戦国無双夢

□珍客?邪魔者?
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「辛くない?」


「俺を誰だと思っている?」


「いや、関係なくない?」


執務中の三成の背中に寄り掛かって座る私。
墨の香り、筆を走らせる音が部屋を包む。


「逆にお前が居ない方が辛い」


三成の言葉に頬が染まるのが容易に分かる。
言葉が浮かばず数分間沈黙が続くが嫌な空気では無い。


「暇ではないのか?」


「うん」


「俺が執務中の時は用が無い限り誰も近付かぬが…
お前は物好きな女だな」


「執務中以外もでしょ?」


「……フンッ」


再び訪れる沈黙。
ただひたすらボーッとしていた。


「三成」


「何だ?」


「執務中の三成にお客さんみたいよ」


空気の入れ替えの為に開けていた襖の隙間から入ってきた可愛い子ちゃんの正体は猫。


「にゃー」


「客と言うよりは侵入者だな」


「何処から忍び込んで来たのかしらね」


猫は私をスルーして三成の真横へ行き、礼儀正しく座っていた。


「にゃー」


「………」


筆を持ったまま見つめ合う三成と猫。


「目的は何だ?」


「にゃー」


前足を揃えて座る猫はただ鳴くだけだった。


「…飯か…?」


「頭でも撫でたみたら?」


折角可愛い猫が目の前に居るのに普段通りの三成が面白い。
猫に触れようと人差し指を差し出したら……


ガブッ!!


「痛ったたた…!!」


指をおもいっきり噛まれた(泣)


「馬鹿者」


「うぅ…(泣)」


噛まれた場所を擦りながら猫を軽く睨んでいたら猫はあろう事か、三成の膝に移動し丸くなる。


「羨ましいわ」


「邪魔なだけだ」


「違う違う。猫に言ってるの」


「…………」


三成の肩に顎を乗せて、膝を独占する猫をジーッと眺める。


「…膝ぐらい何時でも貸してやる…」


ボソッと呟いては筆を動かす三成。
表情は分からないけど、耳の赤さに気付き自然と笑みが浮かぶ。


「人の膝で眠るとはふてぶてしい猫だ」


「猫だからね」


猫の寝顔に癒されていたが、再び邪魔者が現れる。


「失礼します…って今日もお熱いですねご両人」


「五月蝿い」


三成と左近さんの何時ものやり取り。


「左近さん、今日は」


「どうもです。
毎日毎日ご苦労様です」


「?疲れる事はしてないと思うけど?」


「いやいや…鈴さんが来てから殿の八つ当りはめっきり減りましたからね。
鈴さんが傍に居てくれると俺を筆頭に城内の者が八つ当たりの被害に遭わなくて済むんです」


笑いながらとんでもない事を口にする左近さん。


「左近…貴様…!!」


「でも、三成は今浮気中だから…ね?」


「殿が浮気ですかい?」


「そ。今、膝の上にいる可愛い子ちゃんと」


「おや?確かに浮気中ですね(笑)」


猫の存在に気付きニヤニヤ笑う左近さん。


「誰が浮気だ!?」


バンッと勢いよく筆を置くと凄まじい顔で私達を睨む三成。


「にゃ!?」


寝ていた猫も驚いて飛び起きては三成から私の胸に飛び付く。


「おや。今度は鈴さんが浮気ですかい?」


「私には三成が居るから…左近さんで我慢してね」


猫を左近に託す。


「酷い扱いですね」


「にゃーーっ!!!!!」


空気が読める猫なのか…
左近さんを嫌がり走って部屋を出ていく猫。


「「「…」」」


微妙な沈黙が包む。
猫に避けられた左近さんが哀れだが面白い。


「おもいっきり振られたわね」


「賢い猫なのだろう」


「二人共酷いですよ」


左近さんはちょっと寂しそうにして部屋を出ていった。


「…左近は何しに来たのだ…?」


「用件を忘れる程傷付いたのかしら?」


だとしたら笑った事に罪悪感を抱くわ。


「あの男がたかが猫相手に傷付く訳がなかろう」


ふんっと私の言葉を一蹴する。


「じゃあ冷やかしかしら?」


クスクス笑ってたら腕を引かれ、そのまま唇を軽く塞がれる。


「後少しで執務が終わるから待ってろ」


僅かに笑みを浮かべては机に向き合う三成に私はお腹に腕を回す。


「………」
「………」


互いに語らずただ温もりを感じていた。


執務が終わったらおもいっきり抱き締めて貰おうと思いながらそのまま目を瞑っていた…


















 

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