戦国無双夢

□願い
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半「ねえ」


父「ん?どうした?」


半「何か欲しい物とか無いの?」


父「どうした急に?」


半「んー、恩返しかな?
太郎殿や鈴に世話になったのに二人共何も欲求してこないし…」


ある日、茶屋の外の長椅子に座り団子を食べる半兵衛と世間話をしていた。
俺達一家が戦国時代の大阪に来て暫く経っていた。
俺からしてみたら凄く世話になってるからこれ以上何も必要は無かった。


父「俺より娘に聞いてみたら?」


半「うん」


パクパク団子を食べては城に帰る半兵衛であった。















半「鈴」


「ん?」


城内の一室で囲炉裏の火に当たり暖を取る鈴に声を掛ける。


半「鈴は今の暮らしに不満は無いの?」


「無いわよ」


半「少しも?」


「一体どうしたの?」


半兵衛の不思議な質問に私の頭には?が生まれる。


半「鈴は今幸せ?」


「ええ」


半「何で幸せなの?」


「違う時代でも私には家族が居るからね……勿論半兵衛達も」


皆と過ごせる人生を歩んでるんだもの。
これ以上望んだら我が儘でしょ?


半「鈴は無欲過ぎるね」


「そう?」


半「少しは我が儘言って俺を頼ってよ」


「そうね…なら…」


隣に座る半兵衛の耳元に手を添えて呟いた。


「私の望みは…「入るわよー!!」」


勢い良く開かれた襖から現れたのは甲斐姫と兄さんだった。


兄「あ、邪魔したか?」


「えぇ、凄く邪魔ね」


半「空気読まない人ってやだなー」


わざとらしく溜め息を吐く。


甲「な、流石に酷くない!?」


鍋を持った甲斐姫が噛み付く。


ね「こらっ!!何を騒いでるの!!」


更におねねさんまで現れた。


ね「まったく…はい、お汁粉出来たから持ってきたよ」


鍋を囲炉裏に掛けると大量のお汁粉が入ってる。


ね「仲良く食べるんだよ」


「はい。ありがとうございます」


お玉を受け取りお椀にお汁粉を入れる。
すぐに三馬鹿や左近さんも現れ、皆で仲良くおやつタイム。


寒い日に食べるお汁粉は美味い♪
お椀を持つ手が暖かく、口に含むと芯から暖まる。

ふと皆に視線を移す。
兄さんと甲斐姫は仲良くお汁粉を食べていて、三馬鹿はやっぱり騒がしくて左近さんが苦笑しながらお汁粉を啜っていた。


「半兵衛」


半「ん?」


「皆でお汁粉を食べてるでしょ?」


半「うん」


「私はとても幸せだと思うわ」


何気ない日常だけど…ううん、何気ない日常だからこそ幸せなんだわ…


「私の望みはね…」


半「………」


「現状維持かしらね」


木の匙(スプーン)で白玉を掬い、パクっと食べる。


半「…やっぱり無欲だね…」


互いに微笑んではお汁粉を啜る。
心が温かいのはお汁粉だけの所為ではない。絶対に…















半「ところでさっき何て言おうとしたの?」


「私のお願い聞いてくれるの?」


半「出来る範囲でなら」


「なら、雪が降る夜は私に付き合って」


寒さが厳しいこの頃だから雪が降るのを待ち遠しかった。


半「雪?」


「そ。雪見酒に付き合ってね」


半「……それだけ……?」


「うん」


冬は雪見酒。
春は花見酒。
秋は月見酒。
夏は思い付かなかった(笑)


「私の夢よ」


半「覚えとくよ」


「忘れないでね」















幸せなのにそれ以上望むなんて欲張りな事はしないわ。
この幸せが続く事が私の願いよ…





















 

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