戦国無双夢

□雪をも溶かす愛情を
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寒さが身に染みる中、客が居ない茶屋の入り口で空を眺める。


「寒い筈よね」


灰色の空から落ちてきた雪に自然と頬が緩み、そっと手で雪を受け止める。


父「今日は店閉めるか」


「そうね」


暖簾から顔を出した父が客も来ないと判断し、私も同じ意見だった。


外に有る野点傘と緋毛氈を片付け、暖簾をしまう。


「今日は終いか?」


声の主に振り返ると馬の手綱を引きながら歩く人物に暖簾を持ったまま近付く。


「この天気だからね。
三成はこの寒い中何処に行ってたの?」


「秀吉様の命で京に行っていた」


喋る度に白い息を吐く三成はうんざりした表情で空を睨ん…否、見上げていた。


「それはお疲れ様でした。
お茶でも飲んでく?」


「直ぐに秀吉様に報告せねばならぬのだ」


「あ、そうなんだ。
じゃあ私もお城に行くからちょっと待ってて」


「なら早くしろ」


暖簾を片付け、父に城に行く事を伝えると売れ残ったお団子を持っていけと風呂敷に包まれた重箱を渡された。


「お待たせ」


お団子を左手で持ち、右手で傘を持つ。


「はい」


雪が当たらない様に傘を差し出す。


「ふんっ」


傘を奪うように取り上げて私に傘を差し出された。
耳が赤いのは寒さの所為なのか、照れなのかは知らないが私は笑ってお礼を言った。


「…何を笑っている…?」


「三成が面白いからでしょ」


お城に向かって歩みを進めると不機嫌そうに聞いてきたので敢えて眉間の皺が増える言葉を返した。


「…面白いだと…?」


「うん」


予想通りに皺の数が増えた事に更に笑みが深くなる。


「明日積もるかしら?」


「さぁな」


「積もったら雪だるま作るから」


「お前は童か?」


「たまには童心に帰るのも大事よ」


「意味が分からん」


「あはははっ」


お城にはあっという間に着き、門番の人に挨拶をして中に入る。


「直ぐに報告をしてくるから俺の部屋で待ってろ」


「うん」


馬の手綱を引いては厩の方へ行ってしまった。
お城に入ると近くを歩く女中さんに包みを渡す。


「皆で食べて太りましょ(笑)」


「まぁ…鈴様ったら。ですが毎度毎度ありがとうございます。
城の者皆で何時も争奪戦が起きる程なんですよ」


「売れ残りで申し訳ないけど父が聞いたら喜ぶわ」


女中さんにお団子を託しては三成の部屋に向かう。


「…わぉ…」


部屋には入らず縁側で雪を眺めていた。
降り始めより強くなる雪に縁側から手だけ伸ばし雪に触れる。


近くを通る女中さんに草履を用意してもらうと庭に出ては舞う雪に自然と笑みを浮かべて雪を堪能していた。
















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