戦国無双夢

□大切な事
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ヤバイ(笑)
冗談で秀吉さんに千利休さんのお茶を飲んでみたいと言ってみたら本当に実現して驚いた。


「関白様から私のお茶を所望だとお聞きし参りました、千利休と申します」


「鈴と申します。
本日はよろしくお願い致します」


「そのように畏まらないで気を楽にして下さい」


「ありがとうございます」


茶室には私達二人しか居らず正に贅沢な時間を堪能していた。
今の私を皆が見たら驚くだろうな…と想像しつつ…
流石の私でも目上の人には敬意を表す。


「どうぞ」


「頂戴します」


一口飲んではホッと息を吐く。


「………」


「………」


沈黙が小さな茶室を支配する。
利休さんはただ微笑み、静かに座っていた。


「ご馳走様です」


両手を付いて頭を下げる。
私は茶席のマナーは知らないから自己流でやり過ごす。


「如何でしたか?」


「美味しかったです」


「それは良うございました」


頭を下げる利休さんだったが、じっと目を見つめられる…
なにやら私の心を見透かされてる気がするわ…


「何か?」


「いえ…ただ是非感想を頂きたいと…」


「もしかして心を読んでます?」


「まさか…」


…墓穴掘った…(泣)


「感想は美味しかった…
それだけです。
私は利休さんに謝罪をしなければなりません」


「何故でしょう?」


「私は利休さんの肩書きや有名人ってだけでお茶を飲みたいと秀吉さんに我が儘を言いました。
しかし実際は憧れを抱いてお茶を飲んでも美味しいだけでした」


「………」


利休さんは笑みを絶やさず私の言葉に耳を傾けてくれる。


「私は家族、友人、恋人と飲むお茶が一番美味しいのです。
どんな偉い人や腕の良い茶人に振る舞われたお茶は美味しいだけで、幸せや楽しいが無いのです」


私は自分を恥じ入った…
身分や肩書きで人を見られる事を嫌う私が、利休さんに同じ事をしたのだから…


「利休さんには大変失礼な事をした事をお詫び申し上げます」


迷い無くはっきりと謝罪をする。


「どうか面を上げて下さい。
関白様の言われた通り鈴殿はとても素直で純粋な心の持ち主の様ですね」


「素直で純粋ですか?」


家族や皆が聞いたら笑うだろうな(苦笑)


「迷い無く謝罪が出来る人は滅多に居ません。

茶席とは本来相手を遇すもの…
しかし、私の元に来る人々は殆どが名誉の為に来ます。
茶を嗜む事より、私が点てた茶を飲んだ事実が大事なのです」


少し淋しそうに話す利休さんに再び謝罪した。


「心から私の茶を飲みたい時は再びお訪ね下さい」


「宜しいのですか?」


「鈴殿なら大歓迎です」


「家族も一緒に良いですか?」


「勿論です」


「ありがとうございます」


笑い声が茶室に響き、来て良かったと心底思えた。


「利休さんも気が向いたら父の店に来て下さいね。
看板娘の私が心を込めて接客しますから」


「それは楽しみですね」


「たまには利休さんもおもてなしをされましょ?」


お礼を言って茶室を後にするが、足が痺れて転けた事を利休さんに口止めしつつ…















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