あらよる

□始まりの日
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私立サワサワ学園

この辺り………いや、県内でも並ぶ者がいない程の進学校。
部活動も盛んで、全国区の部活動も沢山ある。
教師陣や設備も一流との噂、それに伴い学費もかなり高額らしい。
詰まるところこの学園に通う生徒は

金持ちで頭が良い、またはある分野の超一流

に限られる。

「あまりにも楽しみだったので、学校帰りにそのまま来ちゃいました♪」

隣でアイスココアを飲んでいるこの少女もこの例外ではないのだろう。
あまりにも自分とは違う境遇に、やはり距離を感じてしまう。
やり場のない思いにため息を吐きかけたその時、先ほどのマスターの言葉がふと脳裏によぎる。

そして思い出す。
この偶然の出会いをどうするのかは、まさしく自分自身にかかっていることを。

「オイラもこの一週間、ずっと楽しみにしてたでやんす!」

心からの思いを口にする。
そう、背景がどうあれ、オイラはこの人にもう一度会いたかったんだ。
あの雨の日の出会いを無駄にしないためにも、オイラが今出来ることを考える………が、良いアイデアは全く浮かばない。

「どうかしました?」

ついには彼女に心配までさせてしまう始末。
自分の不甲斐なさに思わず自己嫌悪してしまいそうになったその時、何かが引っ掛かった。

「………やっぱり、嫌…ですよね?」
(何かしっくりこないでやんす…何でやすかね?)
「そう……ですよね、サワサワ学園の生徒と一緒なんて面倒…ですよね」
(何か彼女に関す……ん?彼女?……そうでやした!)
「すみません…私、やっぱり「名前」」
「へ?」

顔を上げると、そこには目尻に涙をためて呆けた顔をしている彼女。

「どうかしやしたか?」
「い、いえ、大丈夫です。それより何ですか?」

顔を赤くしながら涙を拭う彼女を見て疑問は更に深まったが、先を促され言葉を続ける

「だから名前でやんすよ、オイラ達まだ互いの名前すら知らない」
「え?……あっ!?」

おそらく彼女も今気がついたのだろう、彼女はハッとした顔をしていた。

「オイラの名前はガブって言いやす」
「ガブさんですか。強そうな名前ですね!私はメイと言います」

彼女---メイはそう言ってニコリと笑った。

「さんは付けなくても良いでやんすよ。むしろこっちがむず痒い感じなんで、止めてくれると助かりやす」
「わかりました、ガブ」

そして本題はこれからだ。
ずっと考えて、浮かんだ考えはこれくらい。
今さら自分の頭の悪さを悔やんだところでどうにもならないが、それでも悔やみたくなるのは仕方がないと思う。
でも、それでも自分にできるのはこの位なのだから…

「それで、この後なんでやんすが……」



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