あらよる
□試練の先に
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‘あらしのよるに’
あの嵐の夜、初めて会ったあの日決めた合い言葉
その合い言葉で無事に‘再開’を果たした二匹はキミドリヶ原の丘の上
寄り添い合いながら月を眺めていた
『試練の先に』
「ごめんね、ガブ」
しばらくふたりは無言で月を眺めていたが突然メイが口を開いた
「どうしたんでやんすか?」
メイの突然の謝罪に少々戸惑い気味に返事をするガブ
「あの時、あの雪山で私があんな事を言わなければガブは雪崩に巻き込まれる事も、記憶を無くす事もなかった。だから…
ごめんね 」
俯きながら話すメイの耳に聞こえてきたのは意外な言葉だった
「そんなこと気にしていたでやんすか?」
思わず顔を上げるメイ
「そ、そんなことって…」
「いいじゃないでやんすか、オイラとメイ、またふたりでこうしてまた満月を見れる、それだけでオイラは幸せでやんすよ?」
そう言って本当に幸せそうに笑うガブを見て
ふとメイの瞳から涙がこぼれ落ちる
「メ、メイ!?オイラ何か言っちまいやしたか?」
涙の意味を誤解したまま謝るガブが面白くて
可愛くて
愛おしくて
気が付けばメイはガブに抱きついていた
「メ、メイ!?」
暗くてよく判らないが顔を真っ赤にしているだろうガブ
「ガブ、大好きです。私も…幸せですよ!」
「オイラも大好きでやんすよ!」
メイが抱きしめる力を強くするとガブも同じようにメイの背にまわしている腕に力を込め強く抱きしめ返す
今、柔らかい満月の光の中でふたりは互いのぬくもりを感じている
こんな幸せがずっとずっと続くことを祈りながら
fin