あらよる

□始まりの日
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あの雨の日からちょうど一週間が経った日、オイラは再びあの喫茶店にいた。
店内は空いていて、自分以外には2、3人の客がいるくらい。
ちらりと壁に立て掛けてある時計に目をやると、時刻は16時30分少し前を指していた。
約束は17時なので約30分前になる。

ちょっと早く来すぎたでやんすかね?

思えばこの一週間、ずっと今日を楽しみにしていた気がする。

あの雨の日に偶然出会った彼女。
勇気を出して次にまた会う約束を取り付けたは良いものの、緊張で頭が一杯で、連絡先はおろか名前すら聞いていなかった。

何であんなに惹かれたのかは今でもわからないが、彼女にまた会えると思うと、胸に今まで感じたことがない感情が込み上げる。
その暖かい感情が溢れて、ついつい笑みがこぼれてしまったのも一度ではない。

「気持ちの悪いニヤケ顔してんじゃねーよ、営業妨害だ」
「……妨害されるほど客なんていないでやんすよ」

それを指摘されるのも、勿論一度ではない。
憎まれ口を叩くマスターに、憎まれ口でお返しする。
チッと一回舌打ちした後でマスターが再び口を開く。

「うるせーよ、それよりもあの子、よくまた会ってくれるって言ったな」
「不思議でやんすよね〜」

マスターが変な物を見る目でこっちを見ているが、本当に自分自身、何で再び会ってくれるのかわからないでいた。
しかし、そんな些細な事は、彼女にまた会えるという喜びの前には霞んでしまう。

「まぁ…ガブ、これだけは言っておくぞ」
「?」

急にマスターの声が真剣なものに変わった。
オイラも真剣に耳を傾ける。

「―――出会いは偶然かもしれないが、その後にどう続くかはお前次第なんだ、それだけは忘れるなよ。」
チリーン

マスターの言葉が終わると同時に、入り口のベルが鳴る。

「んじゃ、後は頑張れよ」

オイラが何かを言うより先に、マスターは笑みを残しカウンターの奥に引っ込んだ。
それと同時に

「すみません、お待たせしました!」

彼女が姿を表した。

「平気でやんすよ、時間より前に来たのに謝る必要はないでやんす」

振り返って彼女の姿を視界に収める。
一週間ぶりの笑顔は、前回会った時とし変わらずに、相変わらずに眩しいものだった。
しかし、一つだけ前回と大きく違っているところがある。

服装

学校の帰りにそのまま来たのだろう。
制服に指定のカバン、それとエナメルバックを背負った彼女の姿に、一瞬言葉をなくす。

「どうかしましたか?」

彼女に問いかけられて我に帰る。

「い、いや…なんでもないでやんすよ」

見間違える筈のない彼女の制服、もといその高校。
もとより頭の良さそうな子だとは思っていたが……

よりによってサワサワ学園でやんすか…

オイラは思わず心の中でため息をついた。



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